【開催報告】SENQ EVENT #3「Talk! Open Innovation の未来」(後編)

SENQ EVENT

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事例を通して知る大企業と先端ベンチャーの協業のポイント(後編)

2017年3月6日@SENQ京橋
(前編は以下リンクから)
https://senq-web.jp/topics/event/1370

第二部は登壇2社の協業による新商品、超特濃ごまアイスを実食しながらお話を伺います。
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【第二部】九鬼産業 × favy

創業131年、全国有数のごま油・食用ごまの製造販売「九鬼産業株式会社」のごまの新たな活用に関する
ベンチャー企業favyとの協業事例について

登壇者ご紹介

山岸祐希氏

九鬼産業株式会社
営業部 山岸 祐希氏

1985年生まれ。名古屋の大学院を出た後、2011年4月に九鬼産業に入社。5年間東京支店で国内の営業を務め、2016年7月からデジタルマーケティング担当に着任。マーケティング担当として九鬼産業のブランドを世に広める取組みを行っている。市場調査、消費者アンケート、日々のニュースなどからターゲットとなる顧客の嗜好や世の中の流行などを分析し、開発部や営業部と共に効果的な販売促進方法を企画・立案。

髙梨巧氏

株式会社favy
代表取締役社長 髙梨巧氏

店舗でのPC販売や大手ポータルサイトのECコンテンツの立ち上げ、インターネット専業広告代理店の事業立ち上げなどを経験。2001年8月株式会社マネタイズ創業、2002年より株式会社アイレップに参画しSEM/SEO事業の立ち上げに従事。2003年にSEMコンサルティング専門会社として再独立し、SEM関連広告商品の日本上陸初期からデジタルマーケティングの専門家として1000社以上のプロジェクトを担当。個人でのリスティング広告運用総額は200億円を超え、国内最大級の運用実績を持つデジタルマーケティングのスペシャリスト。
2015年7月 株式会社favyを創業。分散型グルメメディア[favy]、会員制肉業態の29ONなどを運営。

ファシリテーター

渡辺直

トーマツ ベンチャーサポート株式会社
フードセクターリーダー 渡辺 直

新宿にて飲食チェーンの店長として12年間勤務。売上高19ヶ月連続全国一位を樹立。その後新規事業、新店の立ち上げ及び従業員の育成に従事。
有限責任監査法人トーマツ入社。主にミドルマーケット企業の会計監査、株式上場コンサル、企業買収に際しての財務デューデリジェンス等の各種業務に従事。
トーマツ ベンチャーサポート株式会社の創業に参画。フードセクターのリーダーとして100社超のフード系スタートアップ企業を中心としたファイナンス、事業計画策定及び成長戦略支援、官公庁・自治体、大企業の新規事業開発等の各種業務に従事。SENQ京橋アドバイザー。

トークセッション概要

◇既存課題
新しいごまの活用方法。
◆解決方法
ごまの新製品としてアイスクリームを開発。新たなターゲット層(若い女性など)の掘り起こしと、ターゲットを鑑みた表参道での実店舗マーケティング。クラウドファンディングにて通販を実施し特に感度の高い顧客層へのPRを実施。

九鬼産業山岸氏(以下KUKI)
九鬼産業はごま油・すりごま・ねりごま等を製造するごまの総合メーカーで、昨年創業130周年を迎えた老舗です。
食の安全・安心にこだわりを持った企業で、紀ノ国屋や成城石井など高級路線のスーパーにて取り扱いがあります。ごま業界内でのシェアは2位~3位くらい、業績も好調ですが、より一段と飛躍すべく新事業を模索中です。
九鬼産業では、もともとECに力を入れたいと考えていました。そこで共通の取引先を通じて食のデジタルマーケティングに精通しておられるfavyさんをご紹介頂きました。
ECに展開できる商品で消費者の心をつかむような商品を探るため、favyさんと消費者市場調査、戦略立案を実施しました。
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favy高梨氏(以下favy)
もともと九鬼さんからは当社のメディア事業に評価頂いておりました。
一方で当社はメディア事業だけではなく、商品開発もしており、一か月先まで予約の取れない飲食店を複数作っています。直近では「29ON」という低温調理を主体としたお肉の専門店や、月額2,000円でコーヒーが毎日飲み放題になる定額制のコーヒーショップ「coffee mafia」を出店させています。
ご依頼内容はECの売上向上でしたが、九鬼さんの主力のごま油自体は本来スーパーで買うことが多い商品です。何がしかECでしか買えないものを作らなくては戦えないだろうと、そこで当社が企画をして、世界一濃いごまのアイスクリームのレシピを開発しました。
こちらの商品を、3月12日に表参道にてオープンする専門店にて販売開始致します。
老舗の九鬼さんに対して、アイスなど提案して果たして受け入れられるか不安がありましたが、度量広く受け入れて頂いて、専門店まで出させて頂きました。

ファシリテーター(以下SENQ)
新商品開発のこだわりポイントは何でしょうか?

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favy:工場の機械が壊れそうになるほどの超高濃度のごまアイスを実現しています。ごまアイスは通常数%の配合であるところ、今回のアイスは10~20%の配合で加えています。
九鬼さんの商品は、品質はもちろん良いものです。しかしごまの消費量自体はそうそう多いものではありません。健康食品などを除いては、ごまを大量に使う商品はありません。
健康にいいごまをたくさん使うものとは何か、検討し今回の商品にたどりつきました。

SENQ:食品メーカーではないfavyさんが、何故レシピを作るネットワークを持っているのでしょうか?

favy:当社には、大手企業での商品開発的な業務を担当したメンバーが多くおり、業態やメニューを開発することに関してはスムーズにスタートできました。

SENQ:開発のウラ話、苦労したことなどはありますか?
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KUKI:今回のプロジェクトに関する社内承認が一番苦労しました。
今回の商品は乳製品ですが、これまでごましか扱っていなかった会社ですから、既存の研究開発の流れに当てはまらない部分も多く、品質管理や配合試作等での課題は多かったです。
一方、社内一丸で取り組むことで、より一層他部署との関係を強化できました。

favy:九鬼さんは昔ながらのごまの絞り方、製法にもこだわりながら製品を提供しているようなお会社なので、品質管理の要求が高くて苦労しました。
当初九鬼さんのほうから、このアイスは無添加で作ってほしいとのオーダーがあったのですが、基本的にアイスには「無添加」はありません。もちろん健康に害のあるものではないですが、添加物がある程度入ってこそ、あの粘りや形状を維持できます。
3-40軒くらい工場を当たりましたが、レシピをお渡しして試作がまともに作れるのは3-4軒位しかなく、再現は難しい状況でした。
製造先の工場へ九鬼さんからご指導を頂いて工程を改善することで、ようやく製造にこぎつけられました。

SENQ:新規事業実現のためのポイントはありますか?

KUKI:とにかく何回も話すことです。一発でそうそうOKはもらえないので、宿題をもらって何度もブラッシュアップして話しに行きました。

favy:今回は珍しく苦労しなかったケースです。
九鬼さんからは後ろ向きの意見をもらったり差し戻しを受けたりということもなく、サポートを受けて進められていると感じました。
半年くらいしかプロジェクトは経過しておりませんが、すでに製品ができて販売を開始できる、これは大企業とのコラボとしては異例のスピードと思います。
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SENQ:いよいよ専門店が開店しますが、次の展開について教えてください。また協業ニーズについて教えてください。

KUKI:まだ先の話と思いますが、ゆくゆくはこのアイスを製品化して、スーパーやコンビニでもブランド化して販売できればと思っています。
またfavyさんには優良なごま製品をお使いのお店を紹介していただくなど、当社ごま製品を使って頂ける店舗を開拓していけたらと思っています。
出店に関してはgomaya kukiというブランドで展開していきますので、ご興味ある方は是非お声がけください。

favy:我々は、外食関連で月間2000万件のアクセス数があるメディアで、来店誘導率が非常に高いとご評価いただいており、全盛期のグルメ雑誌の様な役割を目指しております。飲食店の集客等に是非お声がけ頂ければと思います。
今回のようにデジタルマーケティングのリサーチのメソッドを流用して商品開発・業態開発することもできます。
メディア機能もありますので開発した業態をPRするところまで可能です。ぜひご興味あればお声がけください。

【会場からの質問】

・今回の企画はアイスの商品開発とのことで、若い女性をターゲットにしていると思うのですが、これはどちらの発案ですか。
→favy:
当社です。九鬼さんの主力商品である「ごま」についてweb検索している人の属性をYahoo・Googleから取り寄せて、中身を分析し、若い世代に可能性があると判断したものです。
九鬼さんの既存顧客層は、体にいいものを意識して少し高いものを購入する層です。あえて逆に若い人に受けるもの、ということで企画自体は3-40出させていただいて一番成功率が高いと考えアイスを採用しました。
今回のアイスはごまの消費量がかなり多く、アイス1玉で9,000粒くらい摂取できます。メーカー様としてもたくさん出荷できるという点をポジティブに捉えて頂けた。
→KUKI:ごまを使ったかき氷や、ごま油をつかったコロッケやとんかつなどもご提案頂いたのですが、検討の結果アイスとなりました。良い企画をして頂いたので、きっと成功すると思っています。

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・新規事業はなかなか導入しにくいと思いますが、九鬼さんは新しいものを取り入れる環境をどうやって作ったのですか。商品開発に新しい企業と組むにあたりどのように分業しましたか。
→KUKI:
国内のごまの市場はほぼ飽和状態で、爆発的な伸びは見込めないだろうという社内の認識があり、新規事業を探していました。偶然、開発担当の経営層の一人が取引先を通じてfavyさんを紹介頂いたことで、社長以下協議の結果、今回の協業を進めていくことになりました。
当社も保守的な会社ながら、開発の部隊にも新規事業に取り組みたいと考えている担当もおり、積極的に手助けをしてくれました。マーケティング担当と開発担当は、今はまだ別の部隊だが、いずれは開発部隊の中にマーケティング専門部を作れたら、と考えています。

【第二部 キーポイントまとめ】

・ベンチャー側の提案力・開発力(依頼内容から一歩踏み出した企画提案、ごま濃度や無添加製品化の追求)
・大企業側の柔軟性(受け入れ)、ベンチャー側へのフォロー
・大企業側の社内貫通力(他部署との調整)
・大企業・ベンチャー双方のスピード感
・企画力あるベンチャーとの出会い(きっかけ)
・建設的なディスカッション(何回も話すこと)

以上

第一部・第二部の協業内容は全く異なるものですが、キーポイントとして挙げられた中にはいくつか似通った内容もありました。
特に第三者を通じてベストマッチングを生み出した出会いがあったことも大きなポイントだったように感じます。
2つの事例とも、大企業、ベンチャー企業双方の強みを、それぞれの弱い部分を補完する形で出会うことにより、協業による新規事業開発につながったケースといえるでしょう。
SENQでも、入会者の皆様にそうしたご縁をお繋ぎできればと思います。

SENQでは、オープンイノベーションを加速させたいご入居者様に対し様々な支援を実施致します。
◆出会いの創出
・SENQ関係先の大企業新規事業担当者または入居ベンチャーの紹介
・交流の幅を広げていただくネットワーキングイベント
◆事業成長支援
・事業ブラッシュアップ・メンタリングに関するメンター各社への紹介
・製品PR・講演等の開催協力
◆各種イベント開催
・ベンチャーピッチ等イベントの参加案内
・ワークショップ、セミナー等の参加案内
等々ご協力させて頂きますので、ご要望ありましたら施設マネージャーにご相談ください。

【ご参考】
今回の登壇者様と提供サービスについて

丸亀製麺(トリドールホールディングス)
https://www.marugame-seimen.com/

akippa
https://www.akippa.com/

九鬼産業
http://www.kuki-info.co.jp/

favy
http://favy.co.jp/

gomaya kuki
http://gomayakuki.jp/

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