10年後のキリンをつくるマーケティングリサーチ。 キリン能重氏が語る、日本の未来とSENQの活用方法

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SAC

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「10年後のキリンをつくっている」。

インタビュー中に何回もこう発言したのは、キリンビバレッジ株式会社 営業本部 営業部 価値営業推進担当 担当部長 能重正規(のうじゅうまさき)さん。ここ数年日本では、若者を中心に商品の買い方が変わってきています。飲料やアルコールとの関わり方も変化しています。世の中の変化に対してキリンがどう行動するべきか。その答えを探っているのがSENQメンターの能重さんです。10年後の食生活や、SENQでの活動について、伺いました。

 
-----キリンビバレッジ社でのご担当を教えてください。
 
能重:現在は、営業部 価値営業推進担当という部署で、価格やマス広告だけに頼らない、新ビジネススキームやチャネル構築、生活者コミュニティの担当をしています。その前はマーケティングやリサーチを担当していました。直近ではキリン株式会社のキリン食生活文化研究所というところに所属していました。SENQと関係をもつようになったのもこの時期です。

一般的なリサーチでは商品や会社の目線からお客様を捉えますが、食生活文化研究所は逆。生活者の目線からキリンを捉えながら、マーケティングやリサーチを行います。ビールは若者離れが起きていると言われていますが、例えば車も同様なことが言われていて、その共通点はなんだろうかと考える、といったイメージです。朝から晩まで飲料のことだけ、車のことだけを考えている生活者は一人もいない。だから飲料だけではなく、生活者を調べることが大事だと。そういう考えです。食に関しての生活を研究している組織は、国内でも珍しいみたいですね。


-----食生活文化研究所で発見した事例を教えていただけますか。

能重:わかりやすい事例を一つ挙げますと、このままいくと「カンパイのビールが消えてしまう」というのがあります。キリンのホームページに掲載しています。

能重様2

能重:働き方改革ということもあってか、数年前から自営業やフリーランスといった方々が増えています。調べていくと、彼らは相対的に、カンパイ時にみんなと同じ「とりあえずビール」をオーダーする確率が低いことが分かりました。SOHOやSENQで働くようなスタートアップの方々なども、おそらくそうなんじゃないかと思います。彼らの持っている気持ちや行動が今後増えたら、カンパイビールは減少することになってしまいます。

(参考)働きかたが変わると飲み物はどうなるのか?

能重:SOHOで働くような方が増えていると言っても、まだ全体の1%程度で、100万人単位の話。今までの考え方だと、そんな少ないところより、数千万人にビールや飲料を飲んでもらうことを考えよう、というのがキリンの文化でした。しかしSOHOのようなカルチャーは、間違いなくこれからどんどん増えてくる。SOHO自体が増えるのもありますが、サラリーマンにも彼らの持つ「カルチャー」や「考え方」が増えるのは間違いない。そうすると10年後にはカンパイビールが飲まれなくなってしまいます。そんな事象を研究し、長期的にどう手を打つかといったことを提言していました。


-
----そこから現在の所属に移られたのですね。

能重:所属は変わりましたが、変わらず新しい価値の発見に取り組んでいます。たとえば先日は、在日中国人の方々にインフルエンサーや拡散の影響で商品を紹介する、という調査的なプロジェクトを実施しました。中国ではマスコミがあまり信じられていなかったり、そもそもテレビを見なかったりする。マス広告の効果が限られている可能性があります。

そのかわりに中国の方々は今、インフルエンサーの声を信じている。そのインフルエンサーを活用して、キリンビバレッジがEC限定で販売しているある商品が、どのようにお客様に受け入れられるかということを実験しました。

日本でも若者を中心に、インフルエンサーの影響が大きくなっています。今の中国人の購買行動は、10年後の日本人の姿であるとも言えるわけです。今回の実験は、10年後の日本人にどうやってキリンの商品を手にとっていただくかという試金石になっていると思います。

ちなみにこの調査はSENQでの縁があって実施できたものです。


-----SENQをうまく活用していただいているのですね。SENQとの出会いについて教えてください。

能重:SENQ は人からの紹介で知りました。当時「キリンは世の中の課題に寄り添った会社になるべきだ。」という想いがあり、その方法を模索していました。食専門のオープンイノベーションオフィスが作られると聞いて、ワクワクしたのを覚えています。というのも、ここにはスタートアップをはじめ、世の中の課題を解決するために動いている方、なにか新しいことをやっている方々がいるというじゃないですか。

能重様3

-----それは素敵ですね!サービスはどのように利用するのでしょうか。

能重:私はサラリーマンなので、ある意味で会社のミッションに従ってビジネスをしています。という割には自由にやってはいますが(笑)。ですがSENQの方々は、新しいビジネスモデルを引っさげて、世の中の課題を解決しようとしている。想定できなかったことを超えるものを持っている人達です。社内にいるだけだと、なかなかこういう方々には出会えないものです。私の「キリンの10年後をつくる」という仕事も相まって、刺激をいただけるという点で、SENQのような場所にいるのは好きなんです。 

たとえばSENQで出会ったfavyさんとは、定期的に情報交換しています。いずれ具体的なビジネスにしていきたいですね。


-----今後はどのような活動をしていきたいですか? 


能重:マーケティングはもちろんですが、CSV(※)にも力をいれていきたいと思っています。 

※Creating Shared Value(共有価値の創造)の略
 (参考)キリンのCSV活動

最近地方の活性化や六次産業化などの話題で、地方に行くことが多いです。地方には地方の課題があると思いますが、「人がいない」「跡継ぎが東京から帰ってこない」「小さな農作物があるけど販路がわからない」など、課題には共通点もあるようです。これらの課題は今まで、なんとなく行政が解決するものだと思っていました。

でも今は、個人としてもキリンとしてももっと貢献できることがあるのではないかと思っています。キリンとして地域の活動に協力して、キリンの商品やサービスを組み合わせながら新しい価値を作っていきたいのです。

能重様4

------ありがとうございました。


 インタビュー・撮影:納富 隼平)


❖ 関連団体・記事
     キリン株式会社                  https://www.kirin.co.jp/
     キリンビバレッジ株式会社https://www.kirin.co.jp/company/about/kirinbeverage/
     キリン食生活文化研究所    https://www.kirin.co.jp/csv/food-life/

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