多種多様な企業が入居しているSENQでは、入居企業とのコラボレーションによるさまざまなイベントが行われています。この記事では、SENQ主催・株式会社リーガルフロンティア21の後援による、経営について学び、士業の人脈を広げるイベント「経営の本質と実務を一日で学ぶ!トーク・ディスカッション&士業ネットワーキング」についてお伝えします。
トーク&ディスカッションで「退職代行」の注意点を学ぶ
この日、第4回を迎えたこのイベント。はじめにSENQ霞が関の会員さまでもある株式会社リーガルフロンティア21の山田 遣人代表が、「同じ入居者である皆さんのお役に立てないかと考えた」と、イベント企画のきっかけについて語りました。
「私自身も経営者ですけれども、多分ここにいらっしゃる皆さんも経営のことで日々お悩みだと思います。お金のこと、人のこと、コンプライアンス、いろいろありますので、ぜひこの機会に、私ども選りすぐりの先生とお知り合いになっていただいて、何か経営で困った時に気軽にご相談できるような間柄になってくれると嬉しいです」と、交流への期待を寄せました。
株式会社リーガルフロンティア21 代表 山田 遣人氏
まず登壇したのは、弁護士の大辻 大佑氏です。テーマは「人材採用とその注意点~退職代行への対応を中心に~」。大辻氏は「今日は『退職代行サービスからアクションを起こされた時、どういう対応が適切か』という観点でお話しできれば」と切り出します。
退職代行サービスから連絡がきた際の初動対応としては、
・退職代行サービスの名称・担当者・連絡先の確認
・連絡内容の記録
・代理権の確認
を行うことが勧められました。
「代理権の確認」は、その退職代行サービスの主体が何かによって対応内容が変わり、主体は大きく分けて「民間企業」「労働組合」「法律事務所」の3つに分類されます。
例えば、主体が民間企業だった場合、民間企業が本人に代わって有給取得や残業代請求などの交渉を行うことは法律上許されていない(代理権がない)ため、申し入れられたとしても、本人または弁護士から連絡をしてもらうように伝えなければなりません。と大辻氏は説明しました。
弁護士 大辻 大佑氏(第二東京弁護士会 所属)
また注意点として「退職を拒否することは法律上できないので、もし連絡があった際はまずきちんと話を聞く」「『今後は退職代行サービスを通して連絡を』と指定された場合、本人に直接連絡することは避ける」、ただしその指定事項が本人の依頼によるものか確認するため「委任状や本人確認書類の写しなどの提出を求める」など、冷静に対応することが重要とのことです。
もちろん、引き継ぎや退職日決定、貸与品の返却、誓約書など、一般的な退職手続きも進めることになります。大辻氏からも「『辞める』と言われてから手続き内容を整理するのでは困りますから、平時から『人が辞める時、どういう手続きが必要か』を整理しておくと、焦らずに対応できると思います」とアドバイスがありました。
大辻氏は最後に、退職代行サービスを利用された後では従業員を引き留められないことに触れ、「まずは辞める方を減らす、会社に残ってもらうための日頃の働きかけが重要だと思います」と企業側の取り組みを促しました。
具体例としては定期的に面談をする、何かあった場合には匿名で相談できる措置を講じる、ストレスチェックをするなど。「ある日突然、前触れなく辞めてしまうことにならないよう従業員との関係性を維持することがポイントです」と伝えられました。
また人材系企業の調査で「退職代行の利用者はチームワーク志向が強い」傾向があることにも触れ、「人間関係的な側面が退職動機に大きく影響しているようですので、安心して気軽に話せる雰囲気づくり、体制づくりを進めていくことが重要。せっかく採用できた方との関係が長く続くような努力が企業側にも求められます」と、トークを締めくくりました。

来年度へ向けて、気になる「助成金」の知識もインプット
続いて登壇したのは、社会保険労務士の並木 陽子氏。テーマは、来年度に向けて知っておきたい「よくわかる助成金セミナー 社会保険労務士が完全解説 事業と人を支える助成金の活用法」です。
並木氏は「助成金専門社労士」という肩書で、「受給額の最大化」を提案しているこの道のプロ。まずは基本中の基本ともいえる「補助金と助成金の違い」について解説がありました。
社会保険労務士 並木 陽子氏
補助金は「目的は経済成長。成長に伴う新規の投資や事業拡大、政策目標達成のための事業を支援するもの」だといいます。その特徴は「競争型で審査が行われ、採択・不採択がある」こと。支援対象の具体例として、設備投資や新規事業、事業そのものへの投資があります。
一方、助成金は「目的は雇用の維持、創出、人材育成、職場改善。人材への投資をサポートするものが多い」といいます。その特徴は「原則要件を満たせば受給できる。ただし、先着順で予算上限に達すると終了する」こと。もらえるはずだった助成金も、知らないといつの間にか終わっていて……となりがちなことから、「助成金は情報戦。情報をつかんで、自社で活用できるものを見つけることが重要」だと強調しました。
助成金の支援対象は「設備投資で業績を底上げする、従業員の能力向上・人材育成を行う、会社組織の運営体制を整理する、IT化やDXで業務効率化を進める」など、事業主の多くが抱えている悩みに関するものばかり。並木氏も「助成金は資金繰りや人材施策を強化する有効な手段」と訴えました。

続いて、助成金についてよく聞かれる質問を紹介・回答していきます。
「助成金の申請時に必要な書類は何か」については、「ほとんどの助成金で雇用契約書、出勤簿、賃金台帳、そして就業規則が必要」なのだそう。
さらに「毎年、法改正が行われるにもかかわらず、何年も書類の内容を変えていない会社が多々あります。助成金は、最新の法令に則った書類でなければ要件を満たさないので、申請することで書類の更新状況をチェックできる利点があります」と続けました。
「なぜ国や自治体が助成金制度を設けるのか」については、職業訓練でGDPを高め、他の国に負けないようにしたい、雇用維持で失業保険の支出を抑え、所得税・住民税・健康保険料などの納付を増やしたい、生産性向上で労働時間を短縮し、働き手の健康を守りたい、といった目的があるとのこと。
「企業にとっては資金も重要です。そこで助成金を活用して、資金・経営資源を確保し、生産性の向上や成長投資の促進を進めていく。そうすると、事業安定性の向上につながり、成長機会が拡大していきます」と、助成金によって企業と国・自治体の双方の利益が合致することを解説しました。
最後に、助成金の活用事例が複数紹介されました。
金属加工を営む企業が「業務改善助成金」を活用し、自動プレス機を導入した事例では、設備に対して助成金が支給されたことに加え、年間労働時間が660時間短縮され、時間外手当の削減も実現したといいます。
エステサロンが「業務改善助成金」で最新の脱毛機とフォトフェイシャル機器を導入した事例では、最新機器導入によって単価アップを実現。新規顧客も獲得し、売り上げアップにつながったそう。
また、パート・契約社員を正社員へ転換することで「キャリアアップ助成金」の支給を受けた企業の事例では、転換に先んじて対象者へ所定の研修を受けさせ「重点支援対象者」の条件を満たしたことで、支給額を倍増させたといいます。
まだまだ話し足りない様子の並木氏でしたが、最後に「ちょっと知っていれば、かなり助成金は活用できる。まだまだいろんなテクニックがありますので、ぜひ助成金に興味を持っていただいて、活用していただければ」と、助成金の可能性をアピールして締めくくりました。
さまざまな得意分野を持った「士業」の方々とネットワーキング
続いて、弁護士、行政書士、公認会計士から不動産鑑定士まで、この日集まった士業の方々と、SENQ会員さまの懇親会を兼ねたネットワーキングが行われました。
士業の方々をよく知る山田氏は、それぞれの自己紹介に先んじて「子育て中のお母さんの〇〇先生」「美味しいお店をいっぱい知っている○○先生」「生物学をやっていた理系の〇〇先生」「トライアスロンが趣味の○○先生」「過去にはアニメスタジオで働いていた○○先生」と、それぞれの先生について“気になるプチ情報”で紹介を盛り上げます。
ラウンジへ移動し乾杯した後は、まるで気の置けない仲間同士のようなにぎやかな話し声や笑い声が絶えず、リラックスして楽しんでいるようでした。

参加者の方にイベントの感想を伺ってみると、「こんなに多くのプロフェッショナルな先生方とお会いできたのが良かったです。何かあった時にはご相談できそうで安心です」と、交流機会を得られたことに喜んでいる方や「トークテーマが退職代行や補助金など、身近にあるテーマでわかりやすかった。補助金や助成金について活用できるものがないか探してみたい」と意気込む方も。皆さん情報のインプットとネットワーキングをしっかり活用されていました。
まとめ
SENQではこのイベントのように、パーティや異業種交流会とはちょっと違うテーマを掲げた交流イベントも度々行われています。同じテーマに関心を持つ人が集まることで、情報収集の機会にもなり、交流がより深まることも。この日、SENQでの出会いからどんな新しいご縁が生まれたのか、今後の展開もとても楽しみです。
(本記事の内容は取材当時の内容になります)













