「地域課題×スタートアップ 共創ピッチ&ネットワーキング」開催レポート

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地域とスタートアップをつなぎ、新たな価値創造を生み出す

中央⽇本⼟地建物グループのオープンイノベーションオフィス「SENQ」は、ベンチャー・スタートアップ・企業内イノベーター・経営者・クリエイター・エンジニア・大学・研究機関・地方公共団体等、多様な分野から日本を動かす先駆者が集まり、オープンイノベーションを加速させる協業と共創の場です。

SENQでは、これまでも業界や組織の垣根を越えたネットワーキングや共創支援を行ってきました。なかでも近年注力しているテーマのひとつが「地域とスタートアップの連携」です。
人口減少や人手不足、産業構造の変化など、多くの地域がさまざまな課題を抱える一方で、スタートアップには技術やアイデアを社会実装するための実証フィールドやパートナーが求められています。また、自治体や地域企業においても、スタートアップとの連携による新たな産業・事業創出へのニーズが高まっています。
しかし実際には、スタートアップ、自治体、地域企業が出会い、具体的なプロジェクトに発展する機会はまだ十分とは言えません。
SENQは、東京に集まるスタートアップと全国各地の自治体・地域企業をつなぐ「共創プラットフォーム」として、その橋渡しに取り組んでいます。その活動の一環として、今回「地域課題×スタートアップ 共創ピッチ&ネットワーキング」を開催しました。
本イベントでは、参加者同士の出会いや対話を通じて、地域での実証実験や新規事業の創出、さらには地域産業の活性化につながるきっかけづくりを目指しました。

今回は、SENQ霞が関で開催されたシード・アーリーステージ向け自治体連携イベント「地域課題×スタートアップ 共創ピッチ&ネットワーキング」の様子を取材してきました。

官民連携はスタートアップの成長と地域課題解決をつなぐ

人口減少や人手不足、産業構造の変化など、地域課題は年々複雑化しています。自治体だけで解決できるテーマが限られつつある一方で、社会課題の解決を目指すスタートアップも増えています。
2026年6月に開催された本イベントでは、官民連携の実践経験を持つ専門家によるインプットトークと、自治体による支援施策や各自治体が抱えている地域課題の紹介に加え、スタートアップによるソリューション提案が行われました。

本イベントの企画運営を行う中央日本土地建物株式会社の松井さんと、企画運営サポートを行う株式会社taliki取締役・原田岳さんのあいさつでイベントがスタートしました。原田さんからは株式会社talikiの紹介とともに、シード・アーリーステージのスタートアップへの支援や共創の必要性が語られました。

北九州市 共創アドバイザー所属の石塚さん

続くインプットトークでは、北九州市 共創アドバイザー所属の石塚さんが登壇し、「地域課題×スタートアップ」について講演しました。

石塚さんは、近年は国や自治体においてスタートアップとの連携を推進する動きが広がっており、全国で官民連携窓口や実証支援事業が増えていると説明します。

「地域課題×スタートアップ」について講演

そのなかで自治体連携には、自治体がサービスを導入する「Sell to Government」、自治体が地域企業や住民への展開を支援する「Sell through Government」、自治体とスタートアップが共同で実証実験や制度づくりなどを進める「Sell with Government」という3つの類型があると紹介しました。

また、「自治体との連携は売上獲得だけでなく、実証フィールドの提供や地域企業とのネットワーク構築、自治体との協定や認証による信用獲得など、事業成長につながるさまざまな価値がある」と解説。

そして「スタートアップ企業側から自治体へ提案する際は、地域課題との親和性を明確に示すことに加え、担当部署の課題に合わせて提案内容を具体化し、自治体の予算編成スケジュールを踏まえてアプローチすることが大切」と指摘し、提案に向けた各準備段階で意識したいポイントを丁寧に解説しました。

自治体側が連携を取る際に意識すべきポイントを紹介

続いて自治体側が連携を取る際に意識すべきポイントを紹介し、最後には「実証実験や協定締結をゴールにするのではなく、社会的インパクトや事業効果を評価しながら事業化や継続的な展開につなげていくことが必要」として講演を締めくくりました。

自治体によるピッチ:神戸市

神戸市からは、「社会実装の実験場」を目指して2016年からスタートアップ支援を本格化していることや、AI・ディープテック分野への取り組みが紹介されました。

その中心となるのが、今年で10年目を迎えた「Urban Innovation KOBE」です。行政課題を公開し、スタートアップと実証実験を行いながら解決策を探る取り組みで、多くのプロジェクトが継続利用や事業化につながっています。

神戸市の取り組みを紹介

2026年度からは行政がテーマを提示する従来型に加え、スタートアップが自由に取り組む課題を提案できる新たな枠組みもスタートしました。「神戸市には都市部も港湾も農村地域もあります。さまざまな社会課題があるからこそ、社会実装のフィールドとして活用してほしい」と呼びかけました。

自治体によるピッチ:堺市

「堺市が大切にしているのは、『補助金』ではなく『対話』です」とインパクトのあるメッセージとともに歴史や伝統産業など地域の魅力を紹介した後、「公民連携実証プロジェクト推進事業」について説明した堺市。

堺市の取り組みを紹介

行政課題に対して企業から提案を募集し、最大200万円の実証支援を行う制度ですが、特徴は応募前の事前相談を設けていること。企業、行政課題担当課、共創担当部署の三者が顔を合わせ、課題や実証内容をすり合わせることで、実現可能性の高いプロジェクトへとつなげています。

また提案の自由度が高い「スタートアップ実証推進事業」は、スタートアップだけでなく、第二創業や学生まで幅広く、新たな挑戦を地域全体で後押しする姿勢を示しました。

自治体によるピッチ:浜松市

「365日、いつでも提案を受け付けています」と力強く語った浜松市。

自動車や二輪車、楽器産業で発展してきた浜松市では、新たな産業創出に向け、地域企業とスタートアップの共創を推進しています。その中心となるのが、マッチングプラットフォーム「ハマハブ!」です。行政や地域企業が抱える課題を公開し、スタートアップからの提案を常時募集。マッチング後は補助金や伴走支援を通じて、実証実験や事業化までサポートしています。

浜松市の取り組みを紹介

「課題解決だけではなく、新しい産業を生み出したい」。浜松市の目指す姿をこう表現し、ピッチを締めくくりました。

自治体によるピッチ:豊橋市

豊橋市が掲げる強みは、「すぐに実証実験を始められる環境」とのこと。全国有数の農業産地である豊橋市では、高齢化や人手不足などの課題を抱える農家とスタートアップをつなぎ、実際の農地を活用した実証実験を進めていると紹介しました。

豊橋市の取り組みを紹介

現場で実証することで、開発段階では気づかなかった課題や新たなニーズが見えてくるケースも少なくありません。草刈りロボットの実証では、農家との対話を重ねるなかで新たな活用方法が生まれ、製品改良につながった事例も紹介されました。

農業分野に加え、地域企業とのマッチングやスタートアップ向け交付金、大学との連携支援も進めており、「まずは気軽に相談してほしい」と参加者へ呼びかけました。

自治体によるピッチ:京都市

スタートアップを次世代の都市成長戦略の柱として位置付けている京都市。新たな都市戦略のなかでスタートアップ支援を重点施策とし、「今後5年間で市内スタートアップ数を約2倍に増やしたい」と紹介しました。

京都市の取り組みを紹介

大学や研究機関が集積する京都市の強みを生かし、社会課題の解決に挑むスタートアップを育成するとともに、世界市場を目指す企業の創出を後押ししています。創業前からアーリーステージ企業を対象とした補助金や伴走支援に加え、コワーキングスペースの利用支援、展示会出展、ネットワーキングなど、多面的な支援メニューを展開しています。

また、「KYOTO CITY OPEN LABO」では、行政や地域課題に対する民間からの提案を募集し、新たなサービスの社会実装や市場創出にも取り組んでいることを紹介しました。

社会課題の現場から生まれる5つの挑戦

自治体によるピッチに続いて行われたスタートアップセッションでは、子育て支援、移住促進、農業DX、介護人材不足など、それぞれ異なる社会課題に取り組む5社が登壇しました。

共通していたのは、自社の技術やサービスを提供するだけではなく、自治体や地域プレイヤーと連携しながら社会実装を進めたいという姿勢です。

株式会社Kids Public|代表取締役 橋本直也さん

「安心して産み育てられる社会になっているのでしょうか」。橋本さんは、人口減少という社会課題を切り口に、子育てを取り巻く現状についてまず問いかけました。子どもの数が減少する一方で、児童虐待相談件数や子どもの自殺者数は高止まりし、妊産婦の死亡要因として自殺も大きな課題となっているといいます。

株式会社Kids Public|代表取締役 橋本直也さん

同社は「当事者を孤立させないこと」と「支援者を支援すること」を軸に事業を展開。主力サービス「産婦人科オンライン」「小児科オンライン」では、250人を超える医師や助産師などの専門家が24時間相談に対応しています。

オンライン相談のなかから支援が必要な家庭を早期に把握し、自治体の支援につなげる取り組みも進めており、現在は244自治体で導入。「既存の子育て支援を補完する形で地域に実装していきたい」と語りました。

株式会社リプロネクスト|代表取締役 藤田献児さん

藤田さんは、自身が地元へのUターン移住を検討していた際に「自治体へ相談したいのに相談できなかった」と感じた経験をきっかけに生まれたサービスを紹介しました。

株式会社リプロネクスト|代表取締役 藤田献児さん

同社が提供する対話型AIコンシェルジュ「NOIM」は、自治体ホームページ上で移住や観光に関する相談に24時間対応するサービスです。単なるFAQではなく、利用者の状況や悩みに応じて会話を進める対話型AIとして設計されており、自治体職員に代わる一次相談窓口として機能します。

導入自治体では相談件数が増加し、その半数以上が自治体の業務時間外に利用されているとのこと。「移住を考えたその瞬間を逃さない仕組みを広げたい」と、自治体との連携拡大に意欲を示しました。

株式会社Kukulcan|取締役CFO チェビョンドさん

Kukulcanが向き合うのは、「畑で捨てられる農産物」と語るチェさん。食品ロスというと飲食店などで発生する廃棄を思い浮かべがちですが、規格外や需要予測の難しさを理由に、出荷されることなく廃棄される農産物は年間約1.1兆円規模にのぼると説明しました。

株式会社Kukulcan|取締役CFO チェビョンドさん

こうした課題に対し、同社は農作物の写真データを活用して収穫量や収穫時期を予測するAIを開発しています。農家はスマートフォンで撮影するだけで収穫見通しを把握でき、食品メーカーや加工事業者は事前に調達計画を立てやすくなるとのこと。

現在は福島県大熊町や佐賀県、岐阜県などで自治体との連携を進めるほか、自ら加工事業も展開。「捨てられていたものを価値に変える」をキーワードに、農業の持続可能性向上を目指していると紹介しました。

ココカラ合同会社|代表 大原秀基さん

「地方には、使われなくなった農業ハウスが数多く残されている一方で、新規就農を希望していても、設備投資の負担が大きく、一歩を踏み出せない人も少なくない」という大原さん。

ココカラ合同会社|代表 大原秀基さん

同社ではこうした課題に着目し、施設園芸向けの培地や栽培システムを活用した農業の高度化に取り組んでいます。センサーやAIを活用した栽培管理に加え、生産から販売までを見据えた仕組みづくりも進めています。

今回特に強調したのが「空きハウス」の活用です。自治体と連携して地域にある空きハウスを調査し、新規就農者へつなぐことで、初期投資の負担軽減と遊休資産の有効活用を図る「産地形成モデル」を提案しました。

さらに、生産した農産物の買い取り・販売まで一体的に担うことで、地域全体で持続可能な農業を支える仕組みづくりを目指している、と説明しました。

株式会社プラスロボ|代表取締役 CEO 鈴木亮平さん

「人材を奪い合うのではなく、地域全体で支え合う仕組みをつくりたい」と語る鈴木さんは、介護・福祉分野の人材不足という社会課題に対し、地域住民と福祉施設をつなぐマッチングサービス「Sketter」を紹介しました。

登録者の多くは介護未経験者ですが、「誰かの役に立ちたい」「地域に貢献したい」という思いを持つ人たちです。資格がなくても担える業務を地域住民が支えることで、施設職員が専門業務に集中できる環境づくりを進めています。

株式会社プラスロボ|代表取締役 CEO 鈴木亮平さん

現在は30自治体と連携し、介護施設だけでなく障害福祉施設や学童保育へも取り組みが広がっています。鈴木さんは、この考え方を「令和時代の互助インフラ」と表現し、地域全体で支え合う新たな福祉のあり方を提案しました。

まとめ

自治体による地域課題の提示と、スタートアップによるソリューション提案。本イベントでは、それぞれの強みや課題が共有され、新たな官民連携の可能性を探る場となりました。

インプットトークでも語られたように、官民連携は実証実験や協定締結がゴールではありません。自治体は地域課題や実証フィールドを提供し、スタートアップは技術やサービスを持ち寄る。その接点をどのように事業化や社会実装へつなげていくかが、今後ますます重要になります。

イベント終了後のネットワーキングでは、自治体担当者とスタートアップが具体的な連携について活発に意見を交わしていました。この日生まれた出会いが、各地域での実証実験や新たな事業創出へと発展していくことが期待されます。
SENQでは今後も、スタートアップ、自治体、地域企業、金融機関など多様なプレイヤーをつなぐコミュニティとして、こうした出会いの機会を継続的に提供していきます。
また、イベントで生まれたつながりを一過性のものに終わらせず、実証実験、事業連携、新規事業の創出へと発展させるための支援にも取り組んでいきます。
地域課題の解決と地域産業の発展。その両立を目指しながら、SENQは今後も全国各地の多様な方々をつなぐ共創プラットフォームとして、新たな価値創造の可能性を支援していきます。

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