【開催報告】「サステナブル領域のスタートアップと投資家が語る未来戦略 持続可能な成長の『鍵』」レポート

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中央⽇本⼟地建物グループのオープンイノベーションオフィス「SENQ」は、ベンチャー・スタートアップ・企業内イノベーター・経営者・クリエイター・エンジニア・大学・研究機関・地方公共団体等、多様な分野から日本を動かす先駆者が集まり、オープンイノベーションを加速させる協業と共創の場です。
今回はSENQ霞が関で行われた、サステナブル領域をテーマとしたイベントを取材しました。

サステナビリティを再考し、革命を推し進める

2024年11月、SENQ霞が関にて「サステナブル領域のスタートアップと投資家が語る未来戦略 持続可能な成長の『鍵』」と題したイベントが開催されました。 日本初のバイオミミクリー専門機関である一般社団法人バイオミミクリー・ジャパン 代表理事によるプレゼンテーションに始まり、投資家とサステナビリティ領域のスタートアップ4社による自己紹介、そして全登壇者によるトークセッション「サステナビリティ革命の進め方」と、盛りだくさんの濃密な時間となりました。

バイオミミクリー×あなたの専門性から見える未来

まずは中央日本土地建物株式会社 事業統括部イノベーション開発室 松井さんによるSENQの紹介、2027年オープン予定の「虎ノ門イノベーションセンター(仮)」の紹介に続いて、一般社団法人バイオミミクリー・ジャパン 代表理事の東 嗣了さんによるプレゼンテーション「サステナビリティ再考:バイオミミクリーとは」が行われました。

自然界の叡智から持続可能なデザインイノベーションを生み出し、循環型・再生型のシステム変容(システミックチェンジ)を起こすアプローチ「バイオミミクリー」。東さんはこのバイオミミクリーについて、アメリカの生物科学者ジャニン・ベニスが提唱した「自然のさまざまな戦略や機能から学んで、僕たちの社会、サステナビリティに生かしていこうという考え方であり、ツールであり、フレームワーク」だと紹介します。

実は興味深いことに、東さんは生物学者でもエンジニアでもなく、人材育成・組織開発の専門家さん。サステナビリティを学ぶ過程でバイオミミクリーに出会い、バイオミミクリー・ジャパンの設立に至ったのだと言います。

バイオミミクリー×あなたの専門性から見える未来

「日本で有名なバイオミミクリーの例は新幹線です」と東さんは説明します。新幹線がトンネルに出入りする瞬間に発生する大きな衝撃波の周囲への騒音やエネルギー効率が問題視された際、当時JR西日本のエンジニアで、「日本野鳥の会」会員でもあった中津英治さんが着目したのが、野鳥の「カワセミ」だったと言います。

「カワセミが水面にダイブする際に、大きな摩擦のエネルギーがかかります。しかし、くちばしの形状により、騒音や水しぶきを最小限に抑えることができる。このくちばしのデザインに着眼して生まれたのが新幹線500系と言われています」。

また、よく引き合いに出される科学分野の考え方「バイオミメティクス(生物模倣技術)」に対して、バイオミミクリーは単なる模倣ではなく、サステナビリティをより意識しているそう。それだけにサステナビリティを高めるためのさまざまな評価項目とデザイン思考のようなフレームワークがあるといいます。

「今、サステナビリティの先に『リジェネレーション(再生)』という言葉も出てきている。今までのサステナビリティの概念は『マイナスになるものを減らしていこう』という世界観でしたが、時代は『プラスのものを増やしていかなければ』という段階、すなわちより自然を回復していく、使えば使うほどよくなる……といったステージに移りつつあることも、バイオミミクリーが注目されている一つの要因だと思います」。

「自然界は38億年の歴史を持っている。何が有効で、何が持続してきたかを知っている。まさに循環社会をずっと作り続けているサステナビリティの大先輩というわけです。だからこそ、私たちは自然を搾取するのではなくて、自然から学んでいく。 さまざまな課題に直面したときに、『自然界ならどう解決するのか』という視点で考えることがバイオミミクリーです」。

バイオミミクリーとは

そして東さんは「バイオミミクリーは、人をつないでいくもの」と可能性を語った。 「例えば研究者、教育機関、環境省、企業……いろいろな専門家が協働し、自然のフィールドを使いながら、いかに持続可能で循環型の社会をデザインしていくか。都市計画デザイナーから地域の住民まで巻き込んで、レジリエントな都市をどう作っていくか。私のような組織開発の専門家と一緒に、どう働きやすい組織を構築していくか。今や異分野の掛け算はグローバルで広がりを見せており、ぜひいろいろな掛け算で皆さんの可能性が広がっていけば」とプレゼンテーションを締めくくりました。

サステナビリティ領域のスタートアップと、熱い視線を送る投資家たち

中村 達哉 さん(グロービス・キャピタル・パートナーズ株式会社 プリンシパル)
「BtoBからBtoCのソフトウェア、ITを中心としつつ、2022年設立の『7号ファンド』(約727億円)ではディープテックへの投資も行っています」

中村 達哉 さん(グロービス・キャピタル・パートナーズ株式会社 プリンシパル)

 

青井 宏憲 さん(booost technologies株式会社 代表取締役)
「プライム上場企業向けに、ESG情報開示の基盤となる統合型SXプラットフォーム『サステナビリティERP』を提供しています。サステナ規制について『まずは表計算ソフトで』という声もよく聞きますが、『それが命取りになりますよ!』という布教活動をしています(笑)」

青井 宏憲 さん(booost technologies株式会社 代表取締役)

 

北原 宏和 さん(Archetype Ventures パートナー)
「当社はBtoBテクノロジーに特化したベンチャーキャピタルで、今年10月にファイナルクローズした3号ファンド(約155億円)を運用しています。「バイオものづくり」は環境負荷を大きく低減させられるポテンシャルはある一方、グリーンプレミアムを含めても化学系のアプローチに迫る競争力を示せていない。そこを乗り越える可能性があるミーバイオの光スイッチタンパク質に着目しています」

北原 宏和 さん(Archetype Ventures パートナー)

 

早水 建祥 さん(株式会社ミーバイオ 代表取締役)
「合成生物学で生物機能をデザインした微生物を用いた、バイオものづくり産業が世界で注目されています。その中で私たちは、石油化学品原料のバイオ代替素材をバイオの世界の中で『一番安く、大量に生産する』こと、その上でカーボンニュートラル社会の実現に貢献することが大きな目標です」

早水 建祥 さん(株式会社ミーバイオ 代表取締役)

サステナビリティ領域の今、近い未来~トークセッション「サステナビリティ革命の進め方」

トークセッションでは、北原さんがファシリテーターを務め、東さん、中村さん、青井さん、早水さんが登壇しました。 最初の話題は「今後予想される世界情勢の変化によるサステナビリティ領域への影響」です。まずは北原さんが、クライメートテックに集まったエクイティ投資のデータを示し、2022年をピークに減少傾向にあり、現在も投資額の低減傾向が続いていることなどを説明しました。

中村さん:
世の中では、パリ協定のCO2排出削減目標に基づいて「2030年までに結果を出せ」と言われているけれど、技術的な実装なども含めた時間を考えると、すでに待ったなしの状況ですよね。大企業は太陽光などの「既存技術」からスタートしなければならないし、それでどれくらいCO2削減できるかというと、目標としている削減量の50%くらいと言われている。
そこで「残り50%をどうするか」をいかに短期間で目処を立てるか各社頭を悩ませている状況だと思っています。今まではビジョンや可能性について語ればよかったけれど、今後3年くらいのチャレンジで具体的な成果を出さなきゃいけない。
世界情勢の変化で一部向かい風はあるとは思いますが、サステナビリティへの取り組み自体は、誰がどう言おうと、大企業やBig Techが舵を切っているので変わりません。

青井さん:
思い出すのはアメリカが2017年パリ協定を脱退したときのことですね。当時は大きな衝撃が走りましたが、すぐ民間団体が立ち上がって、民間主導で脱炭素は進んでいった。今回も同じような流れかなと思っています。

トークセッションの様子

北原さん:
世界情勢変動を見据えた、中長期の時間軸で事業を考えていく必要がありますよね。
青井さんは、“布教活動”を通して大企業の方々と話をしていく中で、サステナビリティを軸とした事業構造の転換についても考えたり、感じたりすることがありますか。

青井さん:
事業とコーポレートが分断してしまっている。グローバルヘッドクオーターは、中長期の事業構造の組み替えも含めたシナリオプランニングもやらなければならないものの、戦略を描き切れていないという問題がありますね。
例えば、SDGsに対応するためのシナリオもなんとなく描いているだけで、具体性が見えていない。どれだけ省エネポテンシャルがあるか各拠点では把握しているものの、「どういう順番でどれだけ投資すればベストか」統合したプランをまったく描き切れていないんです。
中には積極的にプランを実行している企業もありますが、多くはサステナビリティの規制対応ギリギリ」のラインで投資額を決めてしまっている。

日本は一見後れを取っている、でも…。~トークセッション「サステナビリティ革命の進め方」

ここでミーバイオの早水さんは、スタートアップの視点から投資家の皆さんへ質問を投げかけます。

早水さん:
大企業がサステナビリティに積極的に取り組み始めていると感じています。その取り組みに対して、僕たちスタートアップがどう価値を提供できるかは僕たちの研究開発マターなのですが、どうすれば大企業の皆さんに「刺さる」のか、研究開発段階から試行錯誤しています。

北原さん:
日本の企業は事業戦略については綿密な計画を立てる一方、事業ポートフォリオ戦略が手薄になっている現状があります。だから、新しいテーマに対して、中長期のポテンシャルをイメージして、アップフロントに投資をしていくことが難しい。
東さんの「バイオミミクリー」という考え方を浸透させていくには、現場と経営層の両方を動かしていかないといけないと思いますが、どう伝えているのでしょうか。

トークセッションの様子

東さん:
組織開発の中で、バイオミミクリーの前提としてまず「サステナビリティとはなんぞや」から入って、いかに意識変革していくかということをここ10年やっていましたが、やっぱり外資系企業は意思決定が早いんですよね。
例えば、ある外資系アパレルメーカーが急にサーキュラーな商品やデザインを扱い始めたので、サステナビリティ担当者に「なぜ急に?」と聞いたら、「本社からのトップダウンです」と。そのスピード感が違う。
僕の肌感覚ではありますが、日系企業では残念ながらある程度の役職者にも、サステナビリティにすごくネガティブな印象を持っている方がいる。「上は綺麗事ばかり言って、現場のことが何もわかっていない」、事業戦略を聞いても「まず僕たちがやることあり過ぎて、持続可能どころじゃないよ」みたいな、嫌悪感からの分断が起こっている。このような認識の分断を解消し、現実的な取り組みとして落とし込んでいく必要があります。

中村さん:
これまで経済的な価値と環境価値の両立について真剣に向き合ってきた人が限られていますよね。今後20年変わらない不可逆な変化として「我々の事業は何から変えていけばいいのか」を事業単位、会社単位で考えられる人が、希少価値の高い存在になっていくと思います。
例えばアメリカで今、サステナビリティに関するエージェント業は急成長しています。これは、企業のトップが「サステナビリティに真剣に向き合うことのできる人材を現場にどんどん置くべきだ」と考えている一方で、それを受け止める現場サイドは「それなら、サステナビリティに関して詳しい、即戦力の人材や専門家が欲しい」と考えているから。「それなら、サステナビリティ専門のエージェントに依頼しよう」というわけです。日本もこれと同じ構造になるだろうと思っています。

青井さん:
私にもすでにそんな相談がきていますよ。

ここで中央日本土地建物の松井さんから質問が。
松井さん:
日本企業は採用や雇用のあり方、リスキリングできる環境がないといったことで人材の流動性が低くなっている。こうした日本の労働環境がすぐには変わらない中で、どうやって革命を起こせば、今のやり方と違う日本らしいアプローチを生み出せるのかすごく気になります。

北原さん:
革命のアプローチとしてオープンイノベーションが叫ばれて久しいですが、従前の事業構造の延長線上でのトライアンドエラーが多かった。スタートアップとガッツリ連携して取り組んで、新しい事業を創造するという動きはもっと欲しいところですよね。

松井さん:
確かに横並び主義や、先例を参考にした手堅いアクションをしがちな印象ですが、そこでどうやったら大企業がリーダーシップを持って、新しいプラスオンをするためのアクションができるのか。多分1社だけではできないだろうと思うんです。複数の企業が一緒になって、何らかのパワーを持った人達が一体となってアクションしていく、方向性を見出していくようなアプローチが必要なのかなと。

中村さん:
実は日本企業も積極的に投資はしています。その一方で出口の投資回収方法については試行錯誤の段階だと思います。アメリカの投資は「5年後にこれぐらいの規模でこういうスペックのモノを供給してくれ、うちが買うから」という感じでゴールを明確にして、それをきっかけにスタートアップが銀行の融資やエクイティの調達を考えます。つまり顧客が企業に対して先にコミットする。日本はその反対で「モノが出来上がってから持ってきてください」になってしまって、なかなか鶏卵問題を解消できない例を多くみてきました。

トークセッションの様子

早水さん:
北原さんも、投資家の立場で私たちに「LOI(基本合意書)を取ってきましょう」と言いますもんね。LOI、つまり「あなたに興味関心がある」という“お手紙”を大企業からもらってきてください、と。アメリカのあるアクセラレーションプログラムに参加した際も、メンターから「今あなたのフェーズで、アメリカ展開を考えるのは時期尚早かもしれない。それよりも、研究開発とLOIを取る2点に集中してはどうか」とアドバイスされたんです。すごくシンプルに「そうだな」と思いました。

北原さん:
「開発するお金さえもらえれば、こうした条件で企業が『買う』と言っている」ということなので。投資家としては安心して出資できるし、リスクが低減している分、スタートアップ側の投資家との交渉力もアップする。初期は売り上げが立たないディープテックスタートアップの定石なんだと思います。

松井さん:
日本企業1社で何かムーブメントを起こしていくことはなかなか難しいですが、さまざまな方が一緒になって相乗効果を生むためのビジョンを作りながら、インパクトを構想していく枠組みを作りたいですね。
大企業もスタートアップもそれぞれが、社会課題の解決につながり、かつ、社会性と経済性の両立した枠組みを一つひとつ作っていく。そういったことを虎ノ門イノベーションセンター(仮)でやっていきたいと思っています。ぜひ引き続き、人とつながる取り組みに対して興味を持っていただければ。

北原さん:
社会実装を伴うものなので、いきなり革命が起こるわけではありません。多面的な見方やアプローチで取り組みを積み重ねていくことが重要で、今回のように中央日本土地建物さんのような方々に提供いただく場を通じて、お互いに意見交換し、支え合っていきたいですね。

まとめ

バイオミミクリーの知見から始まり、「スタートアップと投資家」「サステナビリティと経済」「グローバルと日本」など、さまざまな切り口の話題が飛び出したトークショー、どれも大変な熱量に圧倒されました。
サステナビリティ領域に携わる1人として、単に見守るだけではなく、あらためて関わり方を考えてみようと感じた濃密な時間でした。

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