中央⽇本⼟地建物グループのオープンイノベーションオフィス「SENQ」は、ベンチャー・スタートアップ・企業内イノベーター・経営者・クリエイター・エンジニア・大学・研究機関・地方公共団体等、多様な分野から日本を動かす先駆者が集まり、オープンイノベーションを加速させる協業と共創の場です。
2026年2月10日、「SENQ田町」にて開催された本イベントには、企業のサステナビリティ推進に携わる実務者が一堂に会しました。
「SUSTAINABILITY LOUNGE」は、先進企業の実践事例に触れるとともに、参加者同士の対話を通じて、新たな視点や気づきを得ることを目的としています。会場には30社以上の企業担当者や大学生が集まり、企業の垣根を越えた共創のきっかけを模索する交流が行われました。
特別登壇 ①「ロッテ・創業100年を見据えた取り組み事例」
株式会社ロッテ サステナビリティ推進部企画課 課長 飯田 智晴氏
まずは特別講演として、株式会社ロッテ サステナビリティ推進部企画課 課長 飯田 智晴氏が登壇されました。飯田氏は、2023年に一新されたパーパス「独創的なアイデアとこころ動かす体験で人と人をつなぎ、しあわせな未来をつくる。」を紹介。お菓子メーカーとして「コアラのマーチ」や「キシリトールガム」など、さまざまな商品を生み出してきた歩みが、パーパスの根底にあると語りました。
続けて話題に上がったのは、2048年に迎える創業100周年を見据えた長期ビジョン「ロッテ ミライチャレンジ2048」の策定について。この目標は、2048年のロッテを担うであろう若手社員たちが中心となり、バックキャスティング(未来からの逆算)という考え方を軸に設定された経緯が明かされました。
具体的な取り組みとしては、「心身の健康」と「持続可能な調達」の2つの柱があります。
第一の柱「心身の健康」については、ロッテが創業以来、ガムの研究を通じて「噛むこと」が脳の活性化や全身の健康に与えるポジティブな影響を解明してきたことを紹介。
現在ロッテは、喫緊の課題である高齢化社会に対し、口の機能低下が全身の衰えを招く「オーラルフレイル」に注目しています。飯田氏は「ガムを使用した口腔健康プログラムが全国の高齢者に普及すれば、年間1.2兆円以上の介護費抑制に繋がる可能性がある」と語り、まさにCSV(共通価値の創造)の好事例であることを示しました。

第二の柱「持続可能な調達」について、ロッテはカカオ農家の貧困や児童労働、森林減少が密接に関係する「負の連鎖」の解決に力を注いでいます。
ロッテはGPSアプリを活用して農園を正確にマッピングし、衛星モニタリングと照合することで、森林破壊の有無を厳格に管理する体制を構築しました。 また、産地での学校建設や井戸の寄付を通じて、子どもたちが教育を受けられる環境を整え、児童労働問題の解決を目指しています。
飯田氏は、こうしたコストアップを伴う施策を社内で推進する際には「単なる社会貢献ではなく、自社商材となる原材料の安定調達や長期的なリスクヘッジにつながる点など、経営戦略として語ることが大切」と説明しつつ、社内での合意形成を図る重要性を強調しました。
特別講演②「サステナビリティ担当者が持つべきマインドセット」
日本マクドナルド株式会社 ソーシャルインパクト部 部長 一橋大学 非常勤講師 牧 陽子氏
続いて、日本マクドナルド株式会社 ソーシャルインパクト部 部長で、一橋大学にてサステナビリティに関する非常勤講師も務める牧 陽子氏が登壇しました。牧氏は、自社の具体的な活動実績を紹介すること以上に、サステナビリティという概念に対して自身がどのように向き合い、思考を巡らせているかというマインドセットを中心に話を展開しました。
牧氏の講演は、マクドナルドという巨大なプラットフォームを変革し、世の中全体の基準を塗り替えたいという信念の解説からスタート。同社では「Food」「Planet」「Community」「People」の4つの柱を掲げており、2025年までの目標として、お客様提供用パッケージの環境配慮型素材への転換を掲げ、容器や包装の見直しに取り組んできたと語ります。
続けて牧氏は、右肩上がりの成長のみを追求する姿勢を「資本主義の功罪」と表現。サステナビリティ担当者には、既存の価値観に対して提言し、実行しなければならない役割がある、とも示しました。

さらに講義は、社会や環境が持続可能でなければ、企業の経済活動も成り立たないという話題へ。「サステナビリティ担当者こそ、“誰一人置き去りにしない”というSDGsの精神に基づき、効率や優先順位を重視するマジョリティの論理からの脱却が必要です」と、注目されにくい長期的な価値に光を当てる必要性を説きました。
最後に牧氏は「最終的にはサステナビリティ部門という組織が不要になるほど、現場が主体的に動く状態が理想」と述べ、周囲に理解者や協力者を増やしていくことが、サステナビリティ施策を一歩ずつ進めていく「鍵」であると結びました。
衣装協力:エストネーション
主催企業「ミラサス・学生と社会の接点創出に向けた事例」
株式会社ミラサス 代表取締役 堀澤 憲己氏
続いて、本イベントの主催を務める株式会社ミラサス 代表取締役 堀澤 憲己氏からは、自社の取り組みについての解説が行われました。同社はウェブメディアの運営とイベント事業を柱に、サステナビリティ推進における「企業間の連携」と「次世代との共創」を支援しています。
堀澤氏はまず、社会課題の解決に励む若者の熱意が、大人世代へ十分に認知されていない現状を指摘。学生側の広報力や資金面での限界にも触れ、若年層と企業を繋ぐ「ハブ」の必要性を説きました。
具体的な施策として、2025年に開催された大規模イベント「ETHICAL CAMPUS」の実績を紹介。70以上の学生団体と800名以上の来場者が集まり、企業と学生による複数の共創プロジェクトが誕生した成果を共有しました。同イベントは2026年5月には規模をさらに拡大し、1,000名以上の動員を見込んでいるとのこと。 その後、堀澤氏は、会場に招待した各大学の学生を紹介することで、学生と企業関係者との距離を縮め、世代を超えた積極的な対話を促しました。
学生団体登壇「千葉大NESO・子どもたちの原体験作りによる効果」
千葉大NESO 代表 奥山 登啓氏
次世代の視点を代表してマイクを握ったのは、千葉大学の学生団体「千葉大NESO」代表の奥山登啓氏。同大学の博士課程で動物行動学の研究に勤しむ傍ら、子どもたちに自然体験の場を提供する活動に邁進しています。
奥山氏が語ったのは、日本の教育現場が座学に偏り、子どもたちが科学的な発見に伴う「原体験」を喪失している現状です。この課題を解決するため、自然体験を入口に、科学的な思考プロセスを実践できる場として、現役の理系学生が直接指導を行う1泊2日の本格的な合宿「自由研究プログラム」を立ち上げました。
「合宿では、子どもたちが自ら仮説を立て、フィールドワークで生き物を採集。分析したデータを保護者の前で発表するプロセスを大切にしています」と語る奥山氏。具体例として紹介されたのは、小学4・5年生のチームが行った「イワガニの利き手・利き足」に関する研究です。

カニが捕食する際の動きを詳細に記録し、人間との違いを考察する過程は、単なる自然遊びを超えたアカデミックな探究心そのものだと語りました。奥山氏は、こうした幼少期の体験こそが、将来の論理的思考力を養う礎になると強調します。
さらに奥山氏からは「千葉大NESO」の2026年度におけるビジョンが語られました。生物多様性について学ぶ「NESOラボ」や、1年をかけて生物学の実験・解析を行う「NESOアカデミー」の始動も予定しているとのこと。最後には、他団体との連携を目的に、一般社団法人として起業する考えも示されました。
まとめ
先進的な事例の共有を通じ、組織や世代を超えた連携の可能性を広げた第2回「 SUSTAINABILITY LOUNGE」。実務者の知見と学生の熱意が交差した時間は、未来の「当たり前」を形にするためのたしかな一歩を刻みました。
SENQは今後も、ビジネスで共創を起こしたい人々の「繋がり」を提供する場所であり続けます。













