
輸出入業務を請け負う「トレード・コンビニ」を運営するグッディーズ社。業務のスリム化と働き方改革を成し遂げ、次に向かうのは2020年オリンピックを見据えた外国人観光客のお土産市場です。売り手、買い手双方にストレスなく買い物を楽しんでもらうために輸出入のプロが作った新サービスについて、小泉清一代表にお話を伺いました。
-----御社の業務について「輸出入業務の何でも屋さん」というイメージを持っています。
小泉:そうですね。私は元々商社や外資系メーカーで長年輸出入に携わってきました。商社時代は鉄鋼業界を担当し、プラント用鉄鋼製品の輸出に携わっていました。外資系メーカーでは、海外からの原材料調達、製品にしてからの輸出など、様々な業務を担当しましたね。10年前に起業して、貿易代行業務を幅広く請け負うグッディーズを設立し、「トレード・コンビニ」という国際取引の支援全般を担うサービスを展開しています。
企業が海外に進出する際に必要な市場調査や顧客調査、引き合いの獲得、交渉、契約から代金回収まで、私たちが企業の手足となってお手伝いをさせていただいています。積極的に海外展開をしたいが、自社のみでの海外進出はなかなか難しいという中小企業様からお声がけいただくことが多いです。輸出先はヨーロッパが最も多いですが、北米、アジアと幅広いですね。
-----どのような企業からのニーズが多いのでしょうか。
小泉:元々当社が拠点としていた墨田区は中小のものづくり企業がとても多く、中でも、二代目、三代目の若い社長達がこだわりを持った製品を作って海外に展開しようという動きが顕著です。意匠的に優れたものづくりをPRするために、フランスやドイツの展示会に毎年出展されているお客様もおられますよ。ヨーロッパの美意識と相性がいいのだと思いますね。
海外企業の日本進出支援も行っていますので、現在も複数企業の日本進出をお手伝いしています。
-----企業や商品ごとに法律や業界ルール、言語も異なるとなると、とても手間がかかるように
思えますが、いかがでしょうか?
小泉:起業当初は多くの貿易実務経験者を集めることで対応していましたが、経験の中から、輸出入業務を集約・標準化して、フローに沿って遂行できるように業務改革を行いました。それが「トレード・コンビニ」です。とても大変ではありましたが、多くの業界について何年もかけて研究して仕上げたこのマニュアルこそが、自社の強みになっています。
-----それはなかなか他社が真似できないノウハウですね。
小泉:はい。貿易実務は非常に責任が大きく、細かく複雑な知識と作業が必要です。以前は十数名の実務者で対応していましたが、経験によって業務進捗に差が出るなど、お客様の期待値に応えるために試行錯誤した時代もありました。業務を平準化してお客様の商材や業界に応じて実務をデザインするという、当社独自のやり方を開発したことで、より少ない人数でも効率的に業務を遂行できるようになりました。
お客様の中に入り込んで貿易実務を行うため、数年間ご支援させて頂いたお客様の中には、私たちのやり方をみて、ひとり立ちされるお客様も多くおられます。
-----「トレード・コンビニ」でのノウハウを生かした新規事業を展開されていると伺いました。
小泉:「トレード・コンビニ」はBtoBですが、新規事業の「Japan Gift Express 」はBtoCで、訪日外国人向けのお土産宅配サービスです。
多くの外国人が訪日の際にお土産をたくさん買っていかれますが、「持ち帰ることが出来ない」という理由で購入を諦めてしまっているものがあります。例えば、飛行機に持ち込めない液体や、扱いが難しい骨董品、仕立てに数ヶ月かかる着物や、ものづくり体験で作った陶器など出来上がりまでにしばらく時間がかかるものなどですね。
持ち帰れないから配送しようと思っても、海外への個人貨物は色々と制限が多い為、諦めざるを得ない。一方で、私たちは「トレード・コンビニ」で培ったスキームがあり、制限のない商業貨物同様にお土産品を扱うことができるため、安く簡単に送っていただくことができます。
私たちは、持ち帰ることを前提としている「お土産」の概念を変えようとしています。
-----それは素敵ですね!サービスはどのように利用するのでしょうか。
小泉:商品は当社システムに事前登録して頂きますので、加盟店の店頭にある端末を使って申し込むだけです。
申し込んでいただいた後は、提携している物流業者が加盟店に集荷に伺い、商品を預かってそのまま輸出してしまいます。言葉が出来ないとか、関税負担など輸出手続きが分からないとか、お土産店には悩みがあると思うのですが、「Japan Gift Express」はご本人が直接端末から申し込むので、言語の問題も全くなく、加盟店には業務上の負担がありません。また、現在は加盟店登録に関する費用もいただいておりません。
-----利用される外国人の方もお土産の選択肢が増えますよね!
日本人とは買い物の量も全然違いますから便利だと思います。
小泉:さらに、加盟店が登録した商品は、「Japan Gift Express」 のウェブサイトからリピート買いができる仕組みも用意しています。例えば、そば打ちセットを購入したけれど自国ではそば粉が手配できないような場合に、「Japan Gift Express」 のウェブサイトを通じてそば粉が購入できるといったように、日本で出会った文化を自国に戻っても継続していただける仕組みを考えています。
-----一度購入した方はその商品の良さをご存知ですから、
そのお店の別の商品を買ってくださる可能性も高いですよね。
小泉:そうですね。加盟店にとっても、新しい顧客を獲得する窓口になると期待しています。
また、外航貨物保険がつけられることも「Japan Gift Express」 の大きな特徴です。通常、個人貨物には貨物保険をつけられないのですが、「Japan Gift Express」は保険がつけられます。つまり、高額商品も安心して購入していただけるのです。「簡単に持ち帰れないもの=高額」である可能性が高いので、ここは重要な部分だと考えています。
似たようなサービスも出始めてきていますが、当社のノウハウが詰まったサービスなので、他社サービスとの差別化は可能と思います。
-----輸出入実務に知見のある御社だからこそ、実現出来るビジネスモデルですね。
現在はどのような商品を購入することができるのでしょうか。
小泉:例えば、浅草の人力車です。人力車を作る職人は関東に1人しかいらっしゃらないのですが、その方の会社と加盟店契約をいただいています。普通、人力車が売っているとは思わないから買おうともしないじゃないですか、笑。でも実は販売していて、「トレード・コンビニ」でも輸出のお手伝いをさせていただいています。海外ニーズは元々あるので、「Japan Gift Express」を使えば、浅草で実物を見た観光客の方にお土産として買っていただくことができるようになるので面白いと思います。
-----ええ!人力車ですか!それは驚きです。ビジネスに使う以外にも、かわいいから自宅に置い
ておこうという人が出て来たら面白いですね。
「Japan Gift Express」の今後の展開を教えてください。
小泉:実はこのサービスは、2012年から構想はあり、2016年に東京都が主催するビジネスコンペで特別賞などもいただいていたのですが、既存事業の「トレード・コンビニ」が忙しくて寝かせている状態でした。
オリンピックを来年に控えている今、再度エンジンをかけて取り組み始めたところです。加盟店をどんどん増やしていくことが当面の目標です。
-----SENQ京橋に入居した経緯を教えていただけますか。
小泉:先ほどお話しした業務改革を行ったことにより、組織と仕事内容がスリム化し、毎日社員全員で顔を合わせるための拠点が不要になりました。スタッフは在宅でも仕事ができるように環境を整えつつ、私はこの付近でコワーキングスペースを探していて、気に入ったのがSENQ京橋でした。
-----SENQの会員になってよかったことを教えてください。
小泉:たくさんあります!色々な業界の方と情報交換できるところが何よりいいですね。SENQ京橋では交流イベントが頻繁に開催されるので、時間が許す限り積極的に出席するようにしています。
また、事務所でずっと仕事するよりもリフレッシュができるので気に入っています。
「コワーキングスペースに移った」と言うと、中には良い印象を持たれない方もいるのですが、SENQに案内すると、「なるほど」と好印象に変わります、笑。
------ありがとうございました。
おわりに
気づけばもうオリンピックは来年ですね。どの競技を観に行くか考えるのが楽しいです。そして世界中から日本に外国人がいらっしゃるのもすごく楽しみですね。人力車がたくさん売れますように!海外の観光地で人力車に出会える日もそう遠くない気がしてきました。
(インタビュー:三國 志乃)
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