2/9に引き続いての宮崎県主催イベント第2弾 は、有機野菜の販路開拓について学ぶ勉強会。
今回はオーガニック・有機農業発祥の街、宮崎県綾町(あやちょう)の野菜の販路開拓事例の講演と、株式会社KOMPEITOの黒木氏をゲストにお迎えし、販路開拓のお話を伺いました。30分の講演の後、後半は主催の齋藤氏と来場者とでトークセッションを行いました。
登壇者ご紹介
ゲスト:黒木 信吾 氏 (株式会社KOMPEITO)
1984年宮崎市生まれ。宮崎大宮高校 → 明治大学理工学部物理学科卒業 → ゲーム関連会社 → 物流関連会社 → 広告代理店を経て2014年 株式会社KOMPEITO入社・取締役就任。現在、オフィスワーカーと農家を元気にする野菜流通事業『OFFICE DE YASAI』を展開。
主催:齋藤 潤一 氏 (NPO法人まちづくりGIFT)
全国で地域の仕事づくりを展開。地域プロデューサー/慶應義塾大学 非常勤講師「地域ビジネスで、世界をより良くする」を使命に全国でプロジェクトを展開。メディア掲載:ガイアの夜明け、NHK特集、日経新聞他。経営学修士(MBA)
基調講演
齋藤 潤一 氏
本日のイベントタイトルにある「成功」。農業における成功とは何でしょうか?
地域ビジネス10拠点で展開するまちづくりGIFTの齋藤氏は、成功には「笑顔」と「お金」の両方が大事だと語ります。
地域ビジネスは1勝99敗、早く・たくさん失敗することが実は成功への近道なのだそうです。
綾町は、いち早く全国に先駆け自然生態系有機農業の条例を作りながらも、有機農業を継続するには労務的にも利益的にも厳しい時期が続いていたそうです。そこで転機となったのはある一人の男性。その当時、綾町で道の駅店長を務めていた梶山氏でした。
同時期に隣県でリーダー育成塾を開いていた齋藤氏に相談に来た梶山氏。現状を打破したいという相談に斎藤氏は「成功とは、しっかり経済を動かすこと」を観点にアドバイスしました。
梶山さんは、まず綾町に自費で東京の料理人を呼びました。実際にプロの舌で味わってもらい、評価を得ました。評判が高まり、六本木の大型商業施設に販売ブースをおいてもらえるようになりました。
丸の内にて100人規模の実食イベントを開催し、1人5000円のコースメニューを提供しました。
プロの手で美しく仕上げられたおいしい綾町の野菜はどんどん評価が上がっていきました。「食べてもらいたい人に食べてもらえる」ようになったのです。すべてはたった一人の思いから始まったのでした。
これまでの販路開拓は、作り手の思いは消費者に届かぬ一方通行でした。そこに地域商社が間をつなぎ、相互ニーズを満たすために仲介できる、それこそが成功のポイントだと齋藤氏は語りました。
ゲスト講演
株式会社KOMPEITO 取締役 黒木氏
続いてのゲスト講演は、全国のオフィスにパック型置き野菜事業「OFFICE DE YASAI(オフィスで野菜)」を提供するKOMPEITOの黒木氏です。
まずはOFFICE DE YASAIの事業紹介。農産物の流通には様々なコストがかかります。売価100円の野菜のうち、物流にかかるコストは50円程度かかっています。
仮に中間ルートを省いて生産者から消費者へ宅急便で送付するとすれば、中間マージンは大きく減り、更に商品の価格を生産者が決められるようになります。ただし集客・梱包配送などの作業等は生産者が行わなければなりません。作業所を1か所にまとめれば効率化が図れます。KOMPEITOは生産者から直接集めた野菜を八王子に集約、カット、パック梱包し、オフィスに配送しています。
曲がったキュウリや、房から粒が落ち姿が崩れたブドウ、着果に失敗した小さなマンゴー、、、味がおいしくても少しの欠点があるだけで野菜の販売価値は大きく減じてしまいます。しかしカット野菜なら問題ありません。通常の流通であればB品、C品と呼ばれる商品も、消費者のニーズを理解することが出来れば美味しい野菜を、価値を減じず提供できます。
価値を拾い上げてもらえる農生産者にも、おいしい野菜を手軽に食べられるオフィスワーカーにも、健康に配慮したい企業にも、三方メリットのある仕組み。お客様が増えれば生産者のやる気もUPします。黒木氏は、いいものを作る生産者が評価される仕組みを作りたいと語ります。
事業を続けていく中でKOMPEITOのパック野菜を置いてくれる企業クライアントも多数増えました。
それだけではなく、企業との連携で事業の仕組みも強化されました。キユーピーと提携したことで野菜の温度管理ノウハウが大きく向上。朝日新聞販売店と提携することで配達を効率化しました。
物流は消費者へのラスト1マイルの配達能力をどう確保するか最大の課題です。KOMPEITOは紙面販売低下に代わる新たな収益源の開拓を探していた朝日新聞社と提携。新聞販売員の空き時間を活用した配達の効率化を実現しました。
ベンチャーと大企業双方の特徴、即ち、行動力・ファン層の違い・資金力など、互いの長所の組み合わせにより事業を大きく飛躍させることに成功したのです。
トークセッション
地域プロデューサー 齋藤氏
KOMPEITO 黒木氏
稼ぐ農業塾 森田氏
来場者の方々は講演を聞いてどのように感じたのでしょうか。講演者2名に、稼ぐ農業塾 森田氏を加えた3名と来場者との間で質疑応答が行われました。
質問:KOMPEITOは、起業後どのようにして今のビジネスモデルにたどり着いたのか?
黒木氏:まずは分析のために八百屋から始めました。収益構造にどう問題があるのか確かめたかった。結果、流通費が占める割合が多いことに気付き、より利益がでる方向に計画修正していった。
いきなりオフィス置き野菜にたどりついたわけではなく、初めは健康志向の強そうなスポーツジム等に持参したが、スポーツジムではまったく売れなかった。どういった野菜のニーズがあるのか、知り合いの店舗に置かせてもらい経過をヒアリングしたら、小さいサイズで気軽に持ち帰りやすいものの反応が良いことが分かり、今のビジネスモデルにつながった。
質問:農業ビジネスを始めるにあたり、生産者の立場に一気に変えることは生活の変化も含めて難しいと思う。いきなりではなく徐々に移行できるような中間の選択肢はありますか?
齋藤氏:まずは失敗することが大事。始めてみたら何とかなる、という感覚は、普通の人にはないと思いますが、意外に実際に行動するとできてしまったりする。まずは片足踏み出すこと。
黒木さんは生活のすべてを宮崎にいるわけではなく、宮崎の良さを東京にいるからこそ感じ、効果的に売り込める。
先週登壇した今西さんは半農半Xの働きかたを推奨しています。朝から晩まで農業するよりもそちらの方がよい。例えば自分の店ではルッコラが売れるが、いっそ仕入れるより自分で作ってみようか、とか、手軽なところから始めてみるもよし。
兼業農家と専業農家の割合はご存知ですか?専業農家は27%くらいです。意外にも全国平均しても30%いません。働き方については、生産者の方と直接話すと解決するかもしれません。
質問:消費者と生産者のニーズが合致したポイントについて教えてください。
黒木氏:傷があると価値が一気に下がると思われていたが、実は消費者は特に気にしていないことがわかりました。
質問:綾町の一連の野菜の価値づけ、なぜ成功できたのでしょうか?
齋藤氏:出口をイメージすることが大事だと思います。綾町の野菜を日本中の人に食べてもらうためにはどうすればいいか?トップを狙う為にはどうするか。出口のイメージがあるからKOMPEITOはキユーピーとも朝日新聞社とも提携できたのだと思います。
質問:野菜の安定供給はできていますか?生産量の過不足にどう対応していますか?
黒木氏:全農さんから資金調達を受けている関係もあり、提供している野菜の半分くらいは全農で調達しています。食料自給率を上げたいという全農サイドのミッションもあり、生産者の支援というKOMPEITOのミッションがあり、双方のニーズが合致し提携しています。
最後に
登壇者の皆より、一言ずつお聞きしました。
森田氏
ビジネスの秘訣はゴールのイメージを持ってやりまくるしかない。スポーツチームのイメージが近いと思います。目標から逆算して考えること。これをやりたいと言い続けてチャレンジし続ける。強い気持ちをもって語り続ける。これが大事。
黒木氏
OFFICE DE YASAIを導入したいと思っていながら実行できていない方、または周囲に導入したいという人がいるなら是非ご紹介ください!
斎藤氏
メソッドは大事だが、仲間づくりが一番大事。一人はしんどいし仲間を探すのも重要。「一緒にやろうぜ」という仲間を作ることと、根底にあるのは楽しむ気持ちを持つ、ということ。
「余白」が大事。やりたい!という気持ちと楽しいという気持ちの両立。この野菜が好き!という気持ちからプロジェクトが始まった。そういう気持ちを持てるものを見つけるところから始めてほしい。
今回のイベントも非常に充実した、熱気のある勉強会となりました。
オープンイノベーションオフィスSENQでは、こうした勉強会や交流イベント、事業PRなど、入居者様向けに様々な場を提供しております。イベントへのご参加のほか、自らイベントを開催されたい場合にも場所の提供などご協力させて頂きますので、施設マネージャー宛にご相談ください。
◆SENQメンター
NPO法人まちづくりGIFT 「MACHI LOG-まちろぐ」
http://giftstotheearth.com/
◇SENQ京橋 入会企業
株式会社KOMPEITO 「OFFICE DE YASAI」
http://www.officedeyasai.jp/