昨年よりベンチャー支援サービス「M’s salon」を立ち上げたみずほ銀行。現在はSENQのアライアンスパートナーとして提携しています。ビジネス開発から融資を含めた資金面のアドバイスまで、ベンチャー企業を包括的にサポートするみずほ銀行が、SENQと提携した理由にはどんなものがあるのでしょうか。
今回お話を伺ったのは、みずほ銀行イノベーション企業支援部部長の大櫃直人(おおひつなおと)氏。
新しく立ち上げたベンチャー企業向け会員サービス「M’s salon」の概要や、SENQと提携をして実現したいオープンイノベーションの形について語っていただきました。
みずほ銀行のオープンイノベーションプラットフォーム「M’s salon」
―― 大櫃さんが携わられている、「M’s salon」の概要を教えていただけますか?
大櫃:ザックリ言うと、ベンチャー企業支援のプラットホームです。ビジネス開発から資金面のご支援まで幅広く携わらせていただいております。ベンチャー企業はお金や、人脈、大企業との繋がりといったリソースが足りずに悩んでいる会社が多いんです。そういったところを我々がビジネス開発のお手伝いをしていきます。銀行なので、資本政策や融資も積極的にさせていただけるところも強みですね。
―― 大企業とベンチャー企業を繋ぐ、まさに「オープンイノベーション」ですね。より具体的には、どんなサービスを展開されているんでしょうか?
大櫃:M’s salonにご入会いただくと、定期的にメルマガでセミナーの情報が届きます。たとえば「事業計画の作り方」とか「資金調達の考え方」といったような内容のセミナーなんですが、そういったものに参加していただく中で、企業としての力を付けてもらう。一代で会社を育て上げたような経営者の方にメンターになっていただいて、講師をしていただく“学習塾”のようなサービスも展開します。また、お客さまのプレゼンテーションを映像に撮り、大企業の新規事業部の方にご共有するといったサービスも始めます。
―― いろんな支援サービスを展開されているのですね。
大櫃:そうですね。あとは半年に1度、リアルの場でビジネスマッチングの機会も設けています。この7月に開催したビジネスマッチングフォーラムでは、ベンチャー企業約170社、大企業約70社が参加し、約400件の商談が行われました。実際にこうした場で商談が成立し、マッチング後に技術提供などの業務提携が決まった会社がいくつも出てきていて、我々も驚いているところです。
「オープンイノベーションに必要な、企業が集う“場所”が欲しかった」
―― オープンイノベーション事業にこれほどコミットされていれば、みずほ銀行さん独自に事業を進めることもできるかと思います。SENQと提携しようと思った理由にはどのようなものがあるのでしょうか?
大櫃:確かに私たちは、お客さまに情報や資金を提供させていただくことはできるのですが、オフィスや出会いの場を常設で持つことが現実的に難しいんです。そういった意味で、不動産を中心に展開している日土地さんがSENQのような場所を提供してくださることは、我々からすると非常にありがたい。逆に我々は日土地さんにお客さまのご紹介をする、あるいは、お客さまに日土地さんの“場所”をご紹介することができます。そうした循環を続けるなかで、ベンチャー企業の発展に繋がっていくんじゃないかと思っています。「ベンチャー企業の支援」という同じ目標のもと、持ち合わせていないものをお互いに持ち寄って支援しているという感じですね。
―― 確かに、具体的にネットワークを創出していこうとすると集う“場所”があることは重要ですよね。
大櫃:それから、ただの場所貸しでなく、クリエイティブな空間演出が徹底されているところも「さすが日土地さん」といった感じですよね。革新的なアイデアが出る場面というのは、リラックスしてざっくばらんに話せる空間が必要だと思うので。あとは「霞が関」という立地も非常にユニークだと思います。これが土地の安い郊外でしたら意味がありませんし、官公庁が集まる東京の都心にこうしたスペースを構えられたところにも、懐の広さが伺えます。
SENQと実現したいオープンイノベーションの枠組み
―― 今後、SENQを通じて行っていきたい、オープンイノベーションに関する取り組みはありますか?
大櫃:実は、大企業向けのイベントの実施をこの秋に予定しています。オープンイノベーションを成功させているアメリカの企業をお招きして、大企業に対してレクチャーしてもらう内容です。昨年行ったトライアル版では、70社もの名だたる大企業にお集まりいただきました。今回からの新たな試みとしては、集まっていただいた企業の中からさらに15社程度を選抜し、1社1時間半のマンツーマンコーチングを受けていただく企画も予定しています。
―― 名だたる大企業が70社も集まるんですね。
大櫃:私も驚きましたが、“オープンイノベーションのやり方がわからない”企業が多いのだと思います。オープンイノベーションのニーズがこれほどまでに高まっている背景には、そのくらい会社を取り巻く状況が変わってきていることがあります。たとえば、皆さんご存知のFacebookやGoogleやAmazon、UBER、Airbnb、メルカリさんなど、5~10年で世界を席巻するような企業が出てきていますよね。ロボットや人工知能の会社で大きくなっていく企業も出てくると思います。そういった企業を日本からも積極的に出していかなければいけないわけですが、日本にはアメリカのようにベンチャー企業を育てる枠組み、「エコシステム」がない。そういった意味で、SENQという場所を提供してくださる日土地さんとタッグを組み、ビジネスマッチングや情報を提供しながら、大企業をどんどん巻き込んで、「みずほ版エコシステム」を形にしていけたらと思います。
おわりに
インタビューの中で大櫃さんは、オープンイノベーション業界全体の気運として「他のビジネスのようにライバルを蹴落とすのではなく、みんなで手を取り合ってベンチャー企業を支援していこうという温かい雰囲気がありますね」とも話してくださいました。“日本のビジネス界の明るい未来”という共通の目標のもと、様々なアクターを巻き込んで実現させていくオープンイノベーション。みずほ銀行をはじめとしたアライアンスパートナーとの提携で、世界をけん引する企業がSENQから誕生する日もそう遠い未来ではなさそうです。
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