財団法人のイメージが変わる!こゆ財団の新たな働き方と多くの人を巻き込む力とは(前編)

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SAC

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今回はSENQパブリックパートナーである宮崎県児湯郡新富町のミッションを受けて活動する、「一般財団法人こゆ地域づくり推進機構」(通称「こゆ財団」)の高橋邦男さんに、こゆ財団の活動や働いている人たちなどについてお話いただきました。
こゆ財団は、「世界で一番チャレンジしやすいまちをつくる」ことを目的に、特産品販売と起業家育成という2つの事業を展開する地域商社です。


――新富町とは、どんなところですか?

高橋:宮崎県児湯郡新富町は、人口17,000人の農業の町です。主な農産物はキュウリやピーマン、トマト、お米など。畜産も盛んなほか、一年を通じてさまざまなフルーツがとれるのも特徴です。その一方で、少子高齢化や人口流出といった地方都市の課題は新富町にも共通していて、将来は人口が確実に減り、今のままでは立ち行かなくなります。地域のさまざまな課題の解決に少しでも早く取り組み、まちを持続可能にしなくてはいけない。こゆ財団が設立されたのは、そんな背景からです。

こゆ財団1


――こゆ財団の立ち上げの経緯について教えてください。

高橋:こゆ財団は、特産品販売と起業家育成を行う地域商社として、2017年4月に設立されました。執行理事の岡本は新富町役場の職員でもあるのですが、以前から地域からワクワクが減っていくこと、後継者不足や高齢化で産業が活力を失っていくことに対し、なんとか解決できないか…と、危機感を感じていました。とはいえ、行政の事業はとにかく時間がかかるもので、世の中の動きを考えれば、行政のままでは間に合わない恐れがありました。これを解決するためにたどり着いたのが、“一般財団法人を作る”という手段です。

行政では1〜2年はかかるであろうことが、財団では数ヶ月で実行するなど、我々の事業はとにかくスピードを重視しています。例えば、新富町の特産品である国産生ライチは5月下旬から7月中頃までが収穫期。ライチをブランディングして販売するための準備期間は、設立から1ヶ月程度しかありませんでした。にもかかわらず、「楊貴妃ライチ」という独自ブランドを創り販売実績を上げたほか、5月と6月にはライチ収穫記念パーティーや農園ツアーを実施したり、東京でPRイベントを開催。とにかくスピーディーにさまざまなことに取り組んだ2ヶ月でした。

当時は、ブランディングはもちろんのこと、仕事そのものの進め方にも迷いや戸惑いがあったのですが、いろんな方々の助けもあり、なんとか形になりました。


――スピード感の他にも、財団法人であることの強みを教えてください。

高橋:行政は町民の皆さんに対し、公平にサービスを提供するのが役割です。一方、私たちは一般法人ですので、お客様が求めているものを選択し、販売に注力することが可能です。「○○さんのいちごがおいしい」と話題になると、野菜・果物セット商品の一部として仕入れることもあります。こゆ財団の信条の一つに「まずやってみる」というものがあるのですが、こうした活動の自由度やフットワークの軽さもまた、財団のメリットですね。



――昨年はどのような活動をされていたのでしょうか?

高橋:2017年の前半は特産ライチの販売と起業家育成事業。ライチ関連のイベントやブランディングをしながら、20名の起業家育成を行っていました。起業家育成は新富町内外の人財それぞれが、関わる地域の課題をビジネスの力で解決しようというもので、クラウドファンディングで資金調達を成し遂げ、実際に事業を始めた受講生たちも生まれました。2017年後半は、新富町から委託を受けて運営しているふるさと納税に注力しながら、テクノロジーを活用した農業について農家と共同研究を行ったり、駅や古民家をリノベーションしたりしました。ライチを使った商品開発に取り組んだのもこの時期ですね。

こゆ財団2


――新富町のふるさと納税は、どのような内容なのですか?

高橋:ふるさと納税は、こゆ財団のさまざまな事業を支える柱となっているのですが、それは新富町の農産物が高い品質を保っていて、お客様に評価されているおかげです。主な農産物はフルーツ、ウナギ、牛肉、鶏肉。野菜と果物をセットにした定期便もあります。他の自治体と比較すると、新富町はスター選手のような特別な返礼品がドーンとあるわけではなく、幅広い種類のものがまんべんなく出ています。どれもが主役になれるよう、1つ1つの商品のストーリーをしっかり作り込むことに力を入れていることが、評価につながっているのかもしれません。

こゆ財団3


――特産のライチ事業について教えてください。

高橋:国内に流通しているライチの99%は海外産の冷凍品で、国産ライチはわずか1%だけという希少品です。国内では他に鹿児島で生産されていますが、鹿児島と宮崎を合わせても10t程度(平成27年特産果樹生産動態等調査)と、生産量はわずかです。

昨年は高級フルーツを使ったスイーツを展開されているカフェコムサさんとのコラボレーションで、新富町の生ライチを使ったケーキが期間限定のメニューとして登場しました。1カットで3,000円となかなか高価なものではありますが、とても好評だったことから、今年も6月初旬からの販売を予定しています。


――今後のライチ事業について展望を教えてください。

高橋:ライチ事業については引き続き都市部での販路を開拓しながら、希少価値の高いライチを通じて、新富町を知っていただき、関係人口を増やして、町に移住者や新しい仕事が生まれるようにしたいと思っています。

こゆ財団4


――こゆ財団のメンバーについて教えてください。

高橋:こゆ財団のメンバーは、民間企業の出身だったり、町役場の職員だったりなど、みな出自は異なりますが、全員がチャレンジすることに積極的な人財ばかりです。誰でもやったことのないことに挑戦するのは勇気がいると思いますが、メンバーの果敢なチャレンジのおかげで、新富町のふるさと納税は寄付額を前年度の2倍以上にすることができました。これはみんなでやり抜いた成果ですね。

こゆ財団5


――SENQとの関わりについて教えてください。

高橋:代表理事の齋藤潤一がメンターをつとめていることがそもそものつながりです。2017年4月にはSENQ京橋で、こゆ財団としては初めてとなる東京でのイベントを開催しました。あのときは新富町の特産品であるエリザベスメロンを試食していただきながら、「稼ぐ農業ビジネス塾」と題し、食と農の資源を生かした地方ならではのビジネスについて紹介しました。

ただ、初めてのイベントでなかなか思うように運営ができず、50人ほどのお客様に新富町の農業の魅力を十分に伝えきれませんでした。とても苦い思い出です。

でもそのおかげで、5月に開催した国産ライチに関するイベントはよい反応を得ることができました。なんでもやってみなければわかりません。チャレンジあるのみですね。

こゆ財団は地方の組織なので、ふだんは地方にいます。そうするとどうしても、東京にお住まいの方の意見を聞きたいと思っても、接点がなければ叶いません。その点で、設立直後からSENQ京橋で定期的にイベントを開催でき、東京の皆さんとの接点がつくれたことはとても大きなことでした。また、ビックサイトなどで行われる大きなイベントだと私たちが来場者に印象を残すことは難しいですが、あらかじめ食と農に関心をお持ちの方が30人程度の少人数で集まれる場なら、コミュニケーションの質を高められる。SENQ京橋との接点はそういう意味でも、とてもありがたいものになっています。
(注:インタビュー後編にて取り上げますが、2018年5月17日(木)にもSENQ京橋でこゆ財団による地方移住促進のイベントを開催しています。)


――今後の活動について教えてください。

高橋:設立2年目の今年は、昨年の経験を生かしつつ、商品開発を加速させたり、通年で複数の教育プログラムを実行したりと、さらに新しいチャレンジを進めています。新富町やこゆ財団に関心を持ってくださる大学や企業の方々との関わりも増えてきました。これからも「世界で一番チャレンジできるまち」の実現のために、自分たちからチャレンジする心を持ち続けたいと思います。

高橋さんに、イキイキと語っていただきました。魅力たっぷりの、こゆ財団さん。インタビューは後編へと続きます


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一般財団法人こゆ地域づくり推進機構  https://koyu.miyazaki.jp/

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