INTERVIEW
2019.11.05

SENQはアルムナイ(卒業生)も含めた交流からイノベーションが生まれるような、皆に思い入れを持ってもらえる場所にしたい

アーキタイプベンチャーズ株式会社  代表代表取締役    中嶋 淳 様 

2019年5月、ベンチャー企業の成長に対する支援を一層強化し、オープンイノベーションの促進を目的として、SENQを運営する日本土地建物株式会社がパートナーシップを締結したアーキタイプベンチャーズ株式会社。代表取締役の中嶋 淳(なかじま じゅん)さんは、ご自身もSENQメンターとして、日々寄せられる会員の声に耳を傾け、アドバイスを行なっています。ここでは、中嶋さんのご経歴やSENQでの活動、そしてこれからのSENQと会員に望むことについて伺いました。

 
-----ご経歴と、日本土地建物株式会社とパートナーシップを締結したきっかけを教えてください。
 
中嶋:1989年に電通へ入社して約11年、インターネット関連の仕事をしてきました。そこでアメリカでのYahoo!をはじめ、IT業界にさまざまなスタートアップが出てくるのを目の当たりにしたわけです。投資について学ぶ中で、ベンチャーキャピタルが、そういった新しい産業を創出する支援をしていることも知りました。
おそらく僕が生きている間インターネット産業は成長し続ける、今後世界中からすごい数のスタートアップが現れるだろう……という思いが強まる中で、それをゼロから支援する事業がしたいと考えたんです。

電通を退職した後、投資とコンサルティングを扱う企業に5年半ほど勤め、ライブドア事件があった2006年に起業しました。当時はSENQのようなコワーキングオフィスもあまりなかったので、何社かで使えるオフィスを自分で借りて、シード投資をしながら一緒に成長しよう、というインキュベーション事業を始めたのです。
同時に、大企業の事業開発や新規事業のコンサルティングも手掛けていたので、その両方をつなげるようなビジネスモデルを打ち立てました。今でいうオープンイノベーションですね。

SENQはアルムナイ(卒業生)も含めた交流からイノベーションが生まれるような、皆に思い入れを持ってもらえる場所にしたい

創業から8年ほどは、ファンドではなく自己資本からシード投資をしていたのですが、現在までに2社上場して、8社ほど事業会社に買収されて……と、比較的好調だったので、2014年にファンド運営によるベンチャーキャピタル事業を手掛ける子会社、アーキタイプベンチャーズ株式会社を始めました。その会社で作ったファンドに、日本土地建物株式会社(以下「日本土地建物」)さんからご出資いただいて、パートナーシップを結びました。

SENQを運営する中で、スタートアップのビジネスやコミュニティへの理解を深めながら、スタートアップとの協業などで新しい事業を行っていきたいということでしたので、我々も日本土地建物さんのオープンイノベーションや、新機軸全体に貢献したいと、そして、我々の投資支援先の技術やサービスがその新しい事業に繋がればと考えています。SENQのためだけにやっているというわけではなく、日本土地建物さんの事業全般をどうご支援できるかということですね。

SENQにはスタートアップの方やいろんな事業会社の方、それも今後成長するステージにある方が多数いらっしゃるので、僕はベンチャーキャピタルや、さまざまな事業会社のイノベーション戦略、新規事業をやってきた人間として「アドバイスできることがあったら何でもやりましょう」というのが基本的なスタンスです。


-----「オフィスアワー」と呼ばれるメンタリングプログラムでは、具体的にはどのようなことをしているのですか。

SENQはアルムナイ(卒業生)も含めた交流からイノベーションが生まれるような、皆に思い入れを持ってもらえる場所にしたい

中嶋:悩みを抱えている会員さんと個別面談を行っています。相談内容は「どうやって資金調達していくのか」とか「どういう風に事業戦略を変えていくか」といったことが多いですね。

中小企業の継続性において、もちろん「お客さんがつく」ことも大事ですけど、それ以上に「お金が続く」ことが大事なので。特に、スタートアップのように創業間もない会社は、銀行からお金を借りることが難しい。売上を上げるか、ベンチャーキャピタルや株主から調達するしかないので、そこでどう振る舞えば生き残れるかを話していくことが多いです。

自分達なりのブランドをどういう風に醸成すれば、競合に勝っていけるのかということも、電通でずっとやってきた経験からお話ししています。業界でのポジショニングや、自社やサービスの特色をどう作っていくかという話ですね。今後は会員さんにもう少し気軽に「オフィスアワー」に参加して、活用していただけるといいですね。


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----メンター制度を活用しきれていない人も多いのでしょうか?

中嶋:そこが目下の課題でもあります。一番いいメンターは、実は同じステージで同じように悩んでいる起業家だったりするんですよ。お互いに悩みを相談し合う、相互でのメンタリングが一番良かったりする。実際に我々が投資支援してる人達でもそういうコミュニティがあって、全然違う分野の投資支援先でも仲良くなって飲みに行ったり、話をしたりすることがあるので。場としてもSENQはシェアオフィスではなくコワーキングスペース、つまり異なる人たちと「一緒に働く」ための場ですから。

自分たちでインキュベーションオフィスをやっていた時も、たまに有名な社長が立ち寄ったりすると「おおーっ」と盛り上がって、特にセッティングしていなくても「ちょっと話聞きたいです」という声が挙がりました。起業家として、会社をある程度大きくしている人のアドバイスが一番響くから、自発的に動くんですよね。

資金調達して大きくなっている会社や、苦労したけど何とか上場までこぎつけた会社、ユニコーンになった会社など、いろんな会社の経営者の方が、SENQのような場で話をしてくれるような機会を、我々のネットワークや人間関係も使って供給できればいいですね。


-----今後SENQと会員さんの関係性を強めていくにあたって、アイデアはありますか?

SENQや我々メンターがイベント企画や場を提供していくことはもちろんですが、触媒のような感じになればいいなと思います。せっかくスタートアップ、いわゆる急成長するようなビジネスを創っていきたい人たちがSENQに集まっているのだから、単に大家さんにおんぶに抱っこじゃなくて、自分たちでこの場所を良くしていくために改善提案をしたり、運営にも関与していくといいと思うんです。我々や日本土地建物さんはそれをうまく引き出す役目になると。

手間はかかりますが、その分、会員さんから返ってくるものもきっとあると思います。SENQのマネージャーも会社の仕事という枠を超えてグッとコミットしていくと、単に仕事だけじゃなくて本当に一生の付き合いも含めて出てくるんじゃないかな。

SENQはアルムナイ(卒業生)も含めた交流からイノベーションが生まれるような、皆に思い入れを持ってもらえる場所にしたい

-----SENQの会員の中にはすごいスピードで事業を大きくして、すでに卒業された方もいらっしゃる。ゆくゆくは、そういう方も先輩として話をしに来てくださるような面白い場所にしたいです。

中嶋:いわゆる“アルムナイ”のようなものですね、それが一番いい。SENQは会員にとって思い入れが深まる場所にしたいんですよ。使いやすいだけのシェアオフィスではなくて、ちょっと暑苦しいようなおせっかいぶりが感じられるような。「SENQってすごい面倒くさかったけど、そこがすごく良かったなぁ」みたいな思いがあるから、事業が拡大して、卒業してからも「もらったベネフィットを返さなきゃ」と自然に足が向く、そんな場所であってほしい。

会員さんとマネージャーさんがどういう関係性を持つかというのも重要ですね。僕はSENQって、単純に日本土地建物さんの不動産業の中にある一事業ではない。いわゆるお堅い不動産大手の社員さんと、スタートアップの方々がどう向き合うかによって、会社自体がどう変わっていくかが方向づけられる、すごく大事なインターフェースだと思っています。

例えば、SENQの担当になった社員さんがどんどん起業して、SENQとしてもそれをKPIに定めるとか。実際、VCをきっかけに、事業へ関わりたいと思い立って転職する人は多いんですよ。

他にも、会員同士が自発的に集まって改善提案をする場があったら、マネージャーは「今日はその場で意志決定できる役員を連れてきました。ここでやる・やらないを決めます」というくらい思い切って「セオリーを変えて」くれてもいい(笑)。

-----まさにSENQ六本木のテーマ「CHANGE THE THEORY」ですね(笑)。確かに会社として、従来の都市開発事業では知りえなかったような事業を手掛けるスタートアップ企業にどんどん出会って、非常に刺激を受けているという実感はあります。

中嶋:オープンイノベーションって、単に「新規事業が生まれる」とイコールではないですからね。働き方とか仕事に対する捉え方が硬直化してしまってはいないか?という状況に対して、自分や自社にないものを取り入れる機会でもある。企業側は、起業家のスピード感があって、果敢にリスクを取りながら動く働き方を見習ってみるとか、逆に起業家は、なんでも体当たりでチャレンジするのではなく、大企業のしっかりしたプロセスで進める手堅さに学んでみるとか、双方で考え方や意識を交換していくのも実は大事なんじゃないかな。

SENQはアルムナイ(卒業生)も含めた交流からイノベーションが生まれるような、皆に思い入れを持ってもらえる場所にしたい

------ありがとうございました。

 以上)

 インタビュー:丸田カヨコ)

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