スタートアップ企業こそ補助金・助成金!【前編】そもそも補助金・助成金とは?
「国の助成金制度や補助金制度を利用すると、事業に必要な資金をサポートしてもらえるらしい」。なんとなく聞いたことはあっても、補助金と助成金の違いや、自社の事業が支給対象になるのかはよくわからないという人も多いのではないでしょうか。
そこで、SENQのアライアンスパートナーであり、補助金・助成金申請のサポートを行っている株式会社ライトアップの杉山宏樹さんに、助成金と補助金の違いやメリット・デメリット、一般的な申請の流れについて聞いてみました。
<スタートアップ企業こそ補助金・助成金!【後編】2020年度の傾向をつかもう>はこちら
そもそも補助金・助成金とは?
補助金は経済産業省・中小企業庁による「事業成長を目指す」ためのもの
杉山:まず、補助金と助成金は制度を実施している省庁が違います。補助金は経済産業省・中小企業庁が実施していて、財源は法人税です。そのため、補助金は基本的に事業投資、設備投資や広告費など、事業成長のための投資費用として支給されます。
例えば、「新規事業の企画があるけれども事業資金が不足している」といった時に、新規事業のための投資費用を補助金から得ることができるわけです。
補助金の申請は、税理士や経営コンサルタントがサポートすることが多いです。
助成金は厚生労働省による「従業員が働きやすくする」ためのもの
杉山:助成金は厚生労働省が実施していて、財源は雇用保険です。そのため、助成金は基本的には従業員がいる企業を対象に、人事採用、人材育成、離職防止につながる取り組みなど、従業員が働きやすい環境を作るための投資費用として支給されます。「働き方改革」が深く関わっているのですね。
従業員が多い企業に限定するようなことはなく、たとえ1人でも従業員がいれば対象になるものがほとんどです。申請書類の作成や代理提出は社会保険労務士、もしくは一部の弁護士が行うように定められています。
例えば、創業後、事業が軌道に乗り始めて従業員を雇うフェーズへ移行すると、雇用保険に社会保険と出費がぐっと増える一方、助成金の支給対象にもなるので、実は利用のチャンスもあるわけです。
補助金・助成金のメリット・デメリット
補助金のメリット・デメリット
【メリット】
・個人事業主でも申請できるものが多い
・支給額が比較的大きいものが多い
【デメリット】
・厳しい審査があり、認定される率も制度によってまちまち
・公募期間が比較的短い
・申請した事業計画を実行し、報告した後に支給されるので、キャッシュアウトが先になる
杉山:補助金は従業員の有無を問わないものが多いため、個人事業主も申請できます。また、1,000万円支給される制度もあるなど、支給額が比較的大きいのもメリットのひとつです。
ただし、事業計画などを対象とした審査があり、これをパスしないと認定されません。認定される率は制度によってさまざまで合格率10%の制度もあれば、80%以上もあります。一般的には40%程度といわれます。公募情報も突然発表されるものも多く、募集期間も概ね2カ月程度と短いのが一般的であるため、短期集中して準備をしなければなりません。
助成金は条件を満たすのであれば毎年申請しておいたほうが得ですが、補助金はそこに割くリソースや不確実さを考えると、余裕がある時に申請するほうがいいと言えます。
助成金のメリット・デメリット
【メリット】
・基本的に条件を満たせば認定される
・労務状況を問われるため、申請過程で労務整備ができる
【デメリット】
・申請した事業計画を実行し、報告した後に支給されるので、キャッシュアウトが先になる
杉山:助成金は条件を満たせば基本的に認定されます。先着順ですので、予算上限に達して早期終了することも稀にありますが、期間いっぱいまで募集していることが多いですね。
また、申請する企業は半年以内に会社都合退職者がないことと、労働基準法に準拠していることが条件になります。雇用保険・社会保険に加入し保険料もきちんと支払っていて、残業代未払などの労務違反がない状態を維持している企業です。いわゆるブラック企業は条件を満たさないので、条件に合致するように社内制度などを整えていくと、労務リスクを回避することにもつながります。成長期のスタートアップは目先の事業に気を取られがちですので、足元を固める意味でもおすすめです。
一方、助成金が入金されるのは1年後といったケースが一般的で、すぐにキャッシュを手にできるわけではありません。
補助金・助成金選定から受給までの流れ
杉山:選定から受給までの手順の中では、次の3つが特にハードルが高くなりがちです。
・自社で受給対象となる補助金・助成金を探す
・補助金・助成金の内容をきちんと理解する
・申請に必要な書類の準備をする
「必要書類を用意してエントリー」するまでに挫折してしまう方も少なくありません。最初の準備と理解に時間と手間がかかることは、認識しておいたほうがいいでしょう。
読み慣れない募集要項の情報から自社に合う補助金・助成金を探し出し、絞り込んだ助成金・補助金の膨大な詳細資料を読み込んでその内容を理解し、さらに「どの書類が必要で、どこへ取りに行けばいいのか、書式は……」といったことも把握する必要があります。
補助金の場合、申請にあたって、経費明細書や事業要請書などの書類をいくつも作成しなければなりません。加えて、提出書類中の「事業計画書」の内容で合否を問われます。事業計画書は、「事業の革新性」「実現度」など補助金別に審査項目が開示されていることが多いため、審査項目や加点要素を漏れなく記載することが大切です。そのため作成にあたっては、パートナーの助言を得ることをおすすめします。
助成金の場合も、申請にあたって、就業規則や雇用契約書、賃金台帳、出勤簿をはじめ多くの書類を必要とします。もし、これまでに整えてこなかった書類があれば、一から作ることになります。
誰がやるのか、どこまでサポートしてもらうかがポイントに
どこまでサポートしてもらえるかはパートナー次第
杉山:煩雑な面も少なくない補助金・助成金申請。個人事業主や経営者、または社員が自らすべての準備や手続きを担当するとなれば、かなりのリソースを割かれる心づもりが必要です。また、助成金の申請には社労士を立てなければならず、自分たちだけでは申請できません。そこで、スムーズに申請を進められるよう社労士、税理士、コンサルタントなどのパートナー企業にサポートを依頼するといったこともよくあります。
ただし、その場合は「どれくらいサポートしてもらえるか」が重要になってきます。実は、助成金を得意としている社労士はそれほど多くありません。どこまでの業務範囲をサポートしてもらえるかはパートナー次第です。「どれに応募するかはあらかじめ選んできてください、申請書類も用意してください、チェックはしますので」というケースもあれば、「御社に合う制度を調べてきました、おすすめはこれです。書類の準備もお手伝いしますよ」というケースもあるので、あらかじめ確認しておきましょう。
認定後に不支給になるケースも
実は、苦労してエントリーした助成金・補助金が、認定された後に不支給になるというケースもあります。その理由ははっきりしています。申請した通りに設備投資や研修などをしていない、虚偽の内容で申請したことが判明する、助成金の場合は労務違反があった、社員を会社都合で退職させた、なども含まれます。そういったリスクを回避するためには、申請だけでなく、計画実行にも伴走してくれるパートナーを選ぶことが重要です。
スタートアップの経営者は多忙なので、助成金・補助金に取り組んだものの、申請の準備に手間がかかり過ぎて途中で止めてしまったりするケースが後を絶ちません。いいパートナーを得ることで、申請にかかる時間や手間を分散させ、途中で挫折するリスクを回避することも重要なポイントなのです。
例えばライトアップが運営するJマッチでは、弊社社員と社労士がタッグを組み、それぞれの企業様に合った助成金・補助金を選定するところからサポートします。書類準備の代行や、計画実行もしっかりマネジメントして、不支給のリスクを回避しています。
(ライター:丸田カヨコ)