フリーランスが身を守るための損害賠償保険特集
フリーランスは会社員と違い、仕事でトラブルが発生するとその責任を個人で負わなければなりません。そこで今回は、フリーランスが遭遇しがちなトラブルや、トラブルを防ぐための対処法、リスクヘッジのための保険についてご紹介します。
フリーランスは自分で身を守る必要がある
フリーランスは、働く時間や場所を選べるなどといったメリットがある一方、トラブルに遭遇するとその責任は個人で負わなければならず、ケースによっては損害賠償を請求されてしまうこともあります。では、どのような場合に損害賠償を請求されてしまうのでしょうか。代表的なケースをいくつかご紹介します。
情報漏洩が起きてしまった場合
情報漏洩が想定されるのは、業務で取り扱うために取引先から預かった機密情報を流出させてしまったりするケースです。例えば、紛失したパソコンやスマートフォンから情報が抜き取られたり、カフェなどの無料Wi-Fiを利用した際にデバイスが乗っ取られてしまい、機密情報が盗まれてしまうこともあります。
また、自身が請け負った仕事を下請けに発注した場合は、下請け業者が引き起こした情報漏洩の責任も負う必要があります。
納品物に問題があった場合
納品した商品やモノに問題があると、問題が解消されるまで無償で対応を続けなければならず、場合によっては損害賠償を請求されてしまうことがあります。
具体的なケース(例)
・データ入力を請け負っていたところ、入力ミスで商品の誤発注が発生し、取引先に大きな損害が出てしまった。
・ホームページのリニューアルを請け負ったものの、バグが発生してしまい、取引先の通販の売り上げが大幅に減ってしまった。
納期に遅れてしまった場合
納期厳守はフリーランスの基本です。しかし、どんなに注意していても、体調不良で仕事ができなくなってしまったり、想定外のトラブルで納期に間に合わなくなってしまう場合も考えられます。納期の遅延で取引先の事業に支障が生じた場合には、損害賠償を求められる可能性があることを認識しておきましょう。
訴訟を起こされた場合
取引に関してトラブルが発生すると、想定外のことで訴訟を起こされてしまったり、損害賠償を回避するためにこちらが訴訟を起こさなければならないことがあります。訴訟となれば多額の裁判費用が発生するほか、多くの時間が取られてしまい、計画通りに仕事が進まないといった事態も想定されます。
業務委託契約書を確認して損害賠償のリスクを回避
フリーランスが損害賠償リスクを回避するために一番大切なのが、「業務委託契約書」の事前確認です。契約の際には業務委託契約書を念入りに確認し、必要であればクライアントと契約内容について交渉をすることも大切です。確認のポイントは次の4つです。
1.損害賠償が発生する場合を確認
契約書を確認する際には、どのような場合に損害賠償が発生するのか、細かく確認しておくことが大切です。具体的には、うっかりミスなどの「過失」も責任を負うのか、もしくは故意や悪意、重大なミスによる「重大な過失」に限定されるのか、責任の範囲をチェックします。
また、著作権がかかわる業務ではその内容を、納期については期限を過ぎた場合の責任など、契約内容を細かく確認しておきましょう。
2.損害賠償の範囲を確認
契約書を確認する際には、どのような場合に損害賠償が発生するのか、細かく確認しておくことが大切です。具体的には、うっかりミスなどの「過失」も責任を負うのか、もしくは故意や悪意、重大なミスによる「重大な過失」に限定されるのか、責任の範囲をチェックします。
また、著作権がかかわる業務ではその内容を、納期については期限を過ぎた場合の責任など、契約内容を細かく確認しておきましょう。
3.損害賠償が発生した場合の対応・金額について確認
万一、納品物に問題があった場合、どのように対応するのか契約書で確認をしておきましょう。例えば、問題が解決するまで対応を無償で続けるのか、納期から3カ月間など責任を負う期間が限定されているのか、問題が発生したら直ちに金銭で賠償するのかなど、具体的な対応策を確認しておくことが大切です。
また、金銭で賠償する場合には、上限をあらかじめ定めておくとよいでしょう。
4.一方的に不利な内容がないか確認
今まで紹介した重要な項目のチェックが終わったら、再度、契約内容が一方的に不利な内容になっていないか確認しましょう。納期限などの条件が現実的ではないなど、契約内容に問題がある場合は見直しを要請し、場合によっては取引を見送る判断も必要になります。
フリーランス向け損害賠償保険の紹介
フリーランス向け損害賠償保険は、複数の企業や団体から提供されています。代表的なサービスを、いくつかご紹介します。
フリーランス協会の「賠償責任保険」
フリーランス協会の一般会員(年会費1万円・月額換算約833円)になると、「賠償責任保険」が自動で付帯されます。
業務遂行中の対人・対物事故のほか、納品物の瑕疵によって発生した損害や情報漏洩、著作権侵害、偶然の事故で発生した納期遅延による損害など、フリーランス特有の賠償リスクに備えた保険です。補償額は、補償内容によっては最高1億円、期間中の限度額は10億円に設定されています。
そのほか、大手企業も導入する福利厚生サービス「WELBOX」(自動付帯)、ケガや病気で働けなくなったときの所得を補償する「所得補償制度」(任意加入)や、報酬未払いなどのトラブルに遭遇して弁護士対応を行う場合に備える、報酬トラブル弁護士費用保険「フリーガル」(任意加入)など、会員になることによりさまざまなサービスが受けられます。
「プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会」はSENQのアライアンスパートナーです。同協会の一般会員は特別価格(10%off)でSENQのコワーキング会員に入会できる特典もあります。
GMOクリエイターズネットワークの「フリーナンス」
フリーナンスは、GMOクリエイターズネットワーク株式会社が提供しているフリーランス・個人事業主のための「お金と保険のサービス」です。フリーナンスには、「あんしん補償」という、フリーランス向けの損害賠償責任保険サービスがあります。
「あんしん補償」の補償額は、補償内容によって最高5,000万円、期間中の限度額は5億円に設定されています。フリーナンスにはその他、請求書をフリーナンスが買い取り(最高1000万円まで)、その代金を即日に払う「即日払い」などのサービスもあります(即日払いの手数料は請求書額面の3.0%~)。
USENの「お店のあんしん保険」
店舗を構えて事業を展開しているフリーランス向けの保険です。火災、暴力行為・破壊行為、または盗難などにより設備・什器等が損害を被った場合への補償を中心に、大家さんへの賠償責任をカバーする「借家人賠償責任補償」や、お店を利用したお客様への賠償責任をカバーする「施設賠償責任補償」がセットになっています。
火災や水災など、所定の事象によって生じた休業時の損失をカバーする「休業損害補償」にも任意加入できます。
フリーランスが遭遇しがちなトラブルは、契約内容の事前チェックと賠償責任保険の加入で、リスクを大きく減らすことができます。今回ご紹介した内容を参考に、ご自身の業務で想定されるリスクについて確認してみてはいかがでしょうか。
(FPライター:斎藤 勇)