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官×民の新しい協業のかたち。PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)の可能性

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官×民の新しい協業のかたち。PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)の可能性

現在、アベノミクスの成長戦略の中核である「日本再興戦略」において、活用が期待されているのがPPPPFIPPPは「パブリック・プライベート・パートナーシップ」のこと、PFIは「プライベート・ファイナンス・イニシアティブ」のことです。PFIPPPの代表的な手法の一つと考えられており、簡単にいえば、官民が連携して、効率的かつ効果的な公共サービスの提供を図ることを目的とします。

PPP/PFIを推進する内閣府は、2016年に「PPP/PFI推進アクションプラン」を決定。その後も改正が重ねられ、現在では、人口20万人未満の自治体でもPPP/PFIの導入を進める方針が打ち出されています。今後、さらにPPP/PFIが展開していく可能性はあるのでしょうか? 事例を交えてご紹介します。

PPPとPFIとは?

公民連携の新しいかたち

PPPは、「公民連携」とも呼ばれ、公民が連携して公共サービスの提供を行うスキームのこと。

そしてPFIとは、公共施設等の設計、建設、維持管理及び運営に、民間の資金とノウハウを活用し、公共サービスの提供を民間主導で行うことで、効率的かつ効果的な公共サービスの提供を図るという考え方です。

日本ではPFIPPPの一種と考えられていますが、厳密には意味が少し異なります。

イギリスで生まれたPPP

そもそもPPPの概念が誕生したのは、1990年代のイギリスです。保守党のサッチャー政権は、公共サービスの提供に民間の資金やノウハウを活用しようとする考え方として、1992年にPFIを導入しました。それに伴い、官から民へ事業主体が移行し、事業リスクも民間への移転が進みました。

その後、1997年に労働党のブレア政権が誕生すると、官民間のリスク・シェアリングという考え方へと変化。PPPという概念の一角にPFIも位置づけられるようになり、PPPは、PFIも含んだ官民連携に関するより広い概念を表すようになりました。

日本では、PPP/PFIは新しい事業のあり方として用いられることが多いのですが、実は、イギリスでは90年代に存在していた概念であり、その後も多くの国がこうした考え方を採用しています。官から民への事業主体の移行は世界で先進事例が見られるため、日本で導入するにあたり、リスクを計算したりメリットを考えたりする際の、いいものさしとなっています。

「自治体×企業」のPPPで地域課題を解決

年々増加する、日本のPFI

内閣府がPFI事業の実施状況を調査したところ、平成30年度に実施方針を公表したPFI事業数は73件で、PFI法が制定された平成11年度以降で最多となったことがわかりました。また、平成30年度末までに実施されたPFI事業数の累計は740件でした。

事業数及び契約金額の推移を見ても、年々、その数や金額は上昇しています。分野による内訳を見ると、教育と文化(社会教育施設、文化施設等)が約1/3を占めており、まちづくり(道路、公園、下水道施設、港湾施設等)、健康と環境(医療施設、廃棄物処理施設、斎場等)が続きます。

事業数及び契約金額の推移(累計)

PFIの現状について/内閣府 民間資金等活用事業推進室 より抜粋

日本の事例

データを見ると、順調に推移している日本のPPP/PFI。一体、どういった民間企業が「官」と連携しているのでしょう。

ここでは、大企業とスタートアップそれぞれについて実例を挙げてみます。

(1)福岡県北九州市とNTTドコモ

2020年1月24日、福岡県北九州市はNTTドコモと連携協定を締結。5G時代を見据え、全国初となる官民データ連携の実証実験を行うことを発表しました。

具体的には、北九州市が保有する観光施設などの利用情報データと、NTTドコモの携帯電話の位置情報・顧客属性を掛け合わせて解析。20192月〜202月の約1年分のデータを対象に、2月〜3月に解析を実施、市の観光振興政策の立案に役立てます。

さらに同年夏をめどに、JR小倉駅周辺に民間団体によって遠隔ミーティングができるコワーキングスペースを開設。また、NTTドコモの協力により、5Gが実現するxRVR=仮想現実、AR=拡張現実、MR=複合現実などの総称)を活用し、リモートワークとリフレッシュを兼ねた「ワーケーション」が提供されます。

さらに北九州市は、広報協力やイベント共催などで事業を支援。市外からの来訪者を増やすことで、関係人口を拡大し、将来の移住・定住者を獲得することを狙いとしています。

(2)静岡県藤枝市とIoTBASE

現在、ICT(情報通信技術)の力で人の流れを呼び込む町づくりに取り組んでいる静岡県藤枝市。その一環として全国に先駆け、ソフトバンクと共同で市内全域をカバーするLoRaWANのネットワークを整備。2018年8月からIoTサービス事業者などと連携し、実証実験を行っています。

さらにこの通信環境を生かし、地域課題解決に向けた実証実験を公募。その一つとして採用され、2018年9月から取り組むことになったのが、認知症者の見守り事業です。

藤枝市が活用したのは、東京都豊島区にあるITベンチャー、IoTBASE株式会社が提供するIoTプラットフォーム「SmartMap」。これは、GPS端末によって見守る対象の位置情報をマップ上に展開できるもので、これを使い、徘徊などによる行方不明者の早期発見に生かす実証実験を実施しました。

このように官民が協働することにより、実証実験の結果及び取得データの検証を通じて、認知症の人やその家族が安心して生活を継続できる社会を構築。万が一のときには地域の人々が助け合える地域社会の実現を目指しています。

 

SENQを運営する日本土地建物もPPP事業、PFI事業に取り組んでいます。

■PPP事業:IKOZA(2010年1月竣工)

神奈川県大和市の小田急江ノ島線「高座渋谷駅」前に開発された官民複合施設。大和市が民間事業者に対して市有地を貸し付け、民間事業者が施設の整備、管理運営を実施。

日本土地建物は、同市と定期借地契約を締結して官民複合施設(IKOZA)を建設。建設後は市と民間テナントに対して賃貸事業を行っています。

■PFI事業:霞が関コモンゲート(2007年10月竣工)

文部科学省及び会計検査院のPFI手法による建替えと、これらの官庁施設を含む街区全体の再開発を行った官民協働プロジェクトであり、中央官庁で初めてのPFI事業。

本プロジェクトでは、民間事業者が施設を建設。施設完成後に公共施設等の管理者等に所有権を移転して、民間事業者が施設の維持管理・運営を実施。

日本土地建物は、民間事業者グループの一員として、事業企画、事業推進等を行いました。

PPP/PFIを生かすために必要なこと

成功に導く3つの条件

こうした事例をもっと多くの地域へ広め、拡散していくためには、どういった取り組みが必要でしょうか。海外での先進事例を参考にしながら現状を検討すると、次のことが見えてきます。

(1)官民で適切に役割分担をする

官と民では、それぞれ組織の存在意義や、業務に対する目的意識が異なります。言い方を変えれば「共通言語を持たない」というケースも見られがちです。そのため、PPP/PFIを始める際にはしっかり共通の認識を持ち、適切に役割を分担すること。さらに、両者の役割分担を明確にした仕組みをつくり、守ることが必要です。

(2)何より大事なのは意思疎通

日本で成功している事例を見ても、うまくいっているケースは官民の意思疎通がスムーズにできています。しっかり情報を共有し、コミュニケーションを円滑にすることが、責任体系の確立にとって不可欠であり、官民互いの歩みよりがPPP/PFI成功のための必須条件であることは間違いありません。

大企業からスタートアップまで、今後もますます多くの企業が官民連携に乗り出す時代になっていきます。その際、これら3つの条件を満たすことが、PPP/PFI成功の第一歩といえるでしょう。

 

(ライター:鈴木 博子

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