現在、リモートワーク中。オフィスから離れて働くことでの不便や問題とは?
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、急速にリモートワークの普及が進んでいます。コロナウイルスが流行する以前から「働き方改革」の実現をめざし、多くの企業でリモートワーク導入の是非をめぐる議論がありましたが、ほとんどの企業がさまざまな理由のもとに、実現は難しいと導入を見送っていました。リモートワークの必要性が高まる現在、オフィスから離れて働く社員たちはいったいどのような状況にあるのでしょうか。リモートワークによる不便や問題は生じていないのでしょうか。コロナ問題が収束したあともリモートワークを推進していくために、どのような課題を解決する必要があるのか考えてみます。
リモートワーク、一番の困りごとはコミュニケーション
対面よりコミュニケーションが難しい
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、多くの企業がリモートワークを導入しました。企業によっては、あまり準備期間を得られないまま、急遽リモートワークへ移行したところもあるでしょう。
そうした中、オフィスから離れて働くことになった社員たちはどのような状況にあるのでしょうか。ペーパーロジック株式会社が、東京在住の会社員でリモートワーク・テレワークを行って いる 111 名を対象にアンケート調査を行いました。
「リモートワーク・テレワークの課題はどのようなものがあると感じていますか」という問いに対し、「対面よりコミュニケーションが難しい」と答えたのが45.9%で最多。次いで「書類に勤務先のハンコを押印する必要があり上司の承認・決裁が取りにくい」が28.8%の順になりました。
「雑談にも価値があった」と気づく人多数
同じく、2020年2月にいち早くリモートワークに切り替えたGMOインターネットグループが従業員を対象に行ったアンケート調査では「コミュニケーションの減少に課題を感じている」という声が多く上がりました。なかには、「雑談などの非公式なコミュニケーションが著しく減ったため、中長期的なチームビルディングが難しい」という声も。オフィシャルなミーティングはオンラインなどで行うこともできますが、ちょっとしたおしゃべりや雑談などは、対面でしたいもの。
実は、オフィスでのなにげないおしゃべりや雑談から、仕事のヒントを得たり、上司や先輩からアドバイスをもらったりしていた人も多いでしょう。そうした機会が持てなくなったことで、他者と分離されている孤独感や孤立などを感じ、メンタル的な問題を発症しているという声も聞こえてきます。
家でも会社でも変わらない仕事効率を叶えるために必要な「環境」とは?
設備面など、いまだ環境が整っていないという声も
ペーパーロジック株式会社が行ったアンケート調査によれば、「ツールが整っていなくて非効率」(24.3%)、「wi-fi環境やPC環境が整ってなく、遅い」(21.6%)という声も聞かれました。GMOインターネットグループが行った調査でも、「リモート環境が遅い/アクセスできない」「椅子机とPCサプライがないことによる作業効率低下」が目立つ結果に。
具体的には「リモートデスクトップ環境が遅い(or一定時間遅くなる)ため、 効率が落ちる」「IP制限でアクセスできない社内環境があり、業務ができない 」というリモート環境の不備に対する不満や、「マウス、カメラ、ヘッドセットがなく、作業が滞ることがある」「そもそもノートPCなどがなく、リモート作業ができる環境にない」 「ガイドラインが急に緩和され私物PC/携帯を使っている」というように、物理的な作業環境による不満が聞かれました。
出典:ペーパーロジック株式会社『「リモートワーク・テレワーク」に関するアンケート調査』
リモートワークに肯定的な人が多くても課題は残る
確かに、特に首都圏や大阪など大都市の場合、リモートワークの普及により、通勤ラッシュや人混みが緩和されるなど、新型コロナウイルス感染拡大予防の面では、多くのメリットがあります。
実際、ペーパーロジック株式会社が行った調査でも、「あなたの勤務先で、リモートワーク・テレワークが今後進んで欲しいと思いますか」という質問に対し、「強く思う」「思う」が 96.4%に到達。今後、テレワーク制度の定着を望む人が多いという結果に。
出典:ペーパーロジック株式会社『「リモートワーク・テレワーク」に関するアンケート調査』
その一方で、今回のように、急遽リモートワークに切り替えたことにより、環境や設備面での準備が間に合わず、リモートで働く社員が不便を抱えているという実態も明らかになっています。
PC環境や作業スペースの問題のほかにも、「大量の印刷時にコンビニで毎回印刷。個人用プリンタ、コピー機があればよかった」というような日常的な問題も。仕事では個人での所有が難しいさまざまなOA機器が必要になります。
そうした環境をすべての社員に対し、どう整えるか、今後リモートワークのあり方を見直す上で重要な論点になりそうです。
「郵便物の確認ができない」「自分がどう評価されているか不安」の声も。課題解決の可能性は?
事務作業、顧客対応に課題が発生
そのほか、両社が行った調査によれば、リモートワークの困りごとに関する自由回答で聞かれたのは、「郵便物の確認ができない」「郵送物や押印申請など、どうしても物理的な作業が必要な場面が多い。特に押印は電子サインの導入を希望する」というような、事務作業面での困りごとや、「窓口や緊急対応が実施されているのか、お客様への周知が足りず、 不安を抱かれることがあった」「受電のためIP電話の転送がほしい」というような、顧客対応での困りごとです。
特に、顧客対応についてはしっかり周知徹底しておかなければ、企業に対する不信感を抱かれかねず、今後に支障をきたすことも。また、自宅での仕事ぶりは他者に見えづらいということから、「自分がどのように評価されているか不安」という声も上がりました。
今回の導入を実証実験として役立てるために
今回の新型コロナウイルス問題をきっかけに、「今後もリモートワークが選択できるようにしてほしい」という声が多く上がる一方で、実際にテレワークを行ってみて、会社と家庭でのネット環境に差があることや、事務処理の問題、顧客対応の問題、承認・決裁時の押印の問題が浮上しています。会社でも家庭でも差異なく同じように仕事を進めるためには、一つずつ丁寧に課題を掘り起こし、解決していく必要があることがわかりました。
すべての業種でリモートワークを導入できるわけではありませんが、政府が進める「働き方改革」のもとで、今後、新型コロナウイルスが収束したあともリモートワークを継続したり新たに導入する企業がますます増えると見込まれます。
確かに、リモートワークを行うことで、多様な働き方が実現しますし、今後、育児や介護の必要が生じたときにも対応しやすくなる、というメリットがあります。そう考えると、今回の導入はその“試験紙”としての役割を果たし、実証実験として多くの課題を明らかにしたと言えるでしょう。
浮かび上がってきた課題を真摯に捉え、自社の業態や業務内容、設備、制度、社風などを考慮しながら、どのようにリモートワークの体制を整えていくか。各社の細やかな対応が求められています。
(ライター:鈴木博子)