
アート・クラフトといったハンドメイドのワークショップの体験コマースを運営するCraftie(クラフティ)さん。大人も子どもも夢中になるワークショップを多数提供されています。なぜ起業に至ったのか、なぜハンドメイドというジャンルに特化したサイトを作ったのか、康 瑛琴(カン ヨングン)代表にお話を伺いました。
-----Craftieさんのサービスについて教えてください。
康: Craftieは、ハンドメイドのスタートアップで、現在はユーザーと先生をマッチングするワークショップの予約サービスを展開しています。最近ですと、ハーバリウムが人気だったり、子供向けの万華鏡のクラスがとても面白かったですね。夏休みの時期に子ども向けのイベントを開催したところ、1つのイベントで延べ500名のお子さんが参加してくれました。お子さんからは「また次もやりたい!」、親御さんからは、「うちの子こんなことができるんだ、興味があるんだって初めて知りました!」というような、嬉しいフィードバックを頂いています。
今年は更に、小売店を中心とした法人向けに、イベントやコミュニティ運営のサービスの提供を始めました。これまでのようにお金を払って小売店の場所を借りるというスタイルではありません。そのお店にあったワークショップをカスタマイズして提供します。例えば、お店の商材をワークショップで使用したり、ブランドストーリーに触れる機会をワークショップ中に設けたりして、お店を深く知ってもらいファンを増やします。ワークショップに気軽に参加しつつ、ロイヤルカスタマーになって帰ってもらうことのお手伝いをするという事業です。
-----具体的にどのようなお店で開催実績があるのですか?
康: 初期プロダクトができた3日後にTSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブさんのビジネスコンテストで受賞させていただいたご縁で、毎月中目黒 蔦屋書店でワークショップを開催させてもらっているのですが、おかげさまで沢山の方にご参加いただいていて、その影響か他の企業様からも多くのお問い合わせを頂きました。当社のキャパシティの問題でなかなか手を広げることが出来なかったのですが、今年後半から徐々に法人向けサービスも本格的に拡大しようと動いています。
-----2016年に起業をされていますね。起業という目標はもともとお持ちだったのでしょうか?
康: 起業以前は、外資コンサル企業と国内大手EC企業で、国内外を含め合計7年のサラリーマン生活を経験しています。私はどちらかというと、企業での段階的なキャリアデベロップメントを意識していたタイプで、お給料をもらって価値を提供することが向いている人間だと自分では思っていました。
過去に上司との面談で「将来は起業するのか、それとも会社でステップアップを目指すか」というようなことを聞かれた際に、「起業だけは間違いなくしないです」と答えたほどです。会社でサラリーマンとしてどう成長し続けるか、ステップアップしていくかをぼんやりと考えていました。
起業は、周りにとっても、当の本人である私にとっても、まさかの出来事なんです。
-----どのような出来事から起業につながったのですか?
康: 昔からアートやアクセサリー作りのような手を動かすことはずっと大好きで、前職のメンバーとも定期的に趣味でハンドメイドを楽しんでいました。そんな中で、ある日ふと、ハンドメイドを楽しむためのサービスが少ないということ、そしてそのことが作ることを楽しむ自分にとってフラストレーションになっている事に気づきました。
そこで、試しに市場規模と参加人口を調べてみると、国内で参加人口2,500万人、市場規模9,000億円という巨大な市場であるにもかかわらず、その市場に対して、サービスも少なければ参入企業も少ないという事がわかりました。当時、minneやCreemaは既に立ち上がっていましたが、それ以外に目立ったものは少なく、これから競争が起きそうな予感のする、数少ない市場だと感じたのです。
minneやCreemaはCtoCで「作ったものを売る」ということ支援するサービスモデルですが、「作る」そのものを支援するサービスは少なかったんです。ユーザーでもあった私は、このニーズは絶対にある、このタイミングだと確信してから2~3週間で事業計画を作り、最初のエンジェル投資家である前職のヘッドに見てもらったのがすべての始まりです。そこからはチームを集めてしまい、起業や事業展開について考え切る前に創業してしまっていました。
-----サービスに不可欠な魅力的な先生や、ユーザーを増やしていく中で工夫されたことを教えてください。
康: 初めに参加してくださった先生方が、ワークショップ作品のクオリティも良くて、写真撮影の腕もあるような、とてもスキルが高い先生だったため、ありがたいことに人が人を呼んでいるようなかたちで先生もユーザーさんも自然と増えてくださっています。いまはインスタグラムなどSNSで先生方もご自身の講座の情報を拡散してくださるので、そこからCraftieを知っていただくことも多いようです。
とはいえ、そのような先生方の目にとまることができた要因は、ユーザー目線に立って工夫を重ねていたことにあります。これまではなかったハンドメイド専用のサイトであることであったり、使いやすいサイト設計にしていることであったり、写真を沢山掲載できたりということは、先生方へのヒアリングでも評価いただいたポイントです。
-----先生や生徒、いずれもユーザー目線でのサービス設計が素晴らしいと感じました。
康: はい、私たちはサービスを通して、豊かな時間や素敵な経験を紡いでいくカンパニーだと思っているのですが、ワークショップは、実際に体験しているときだけでなく、どれに参加するかということを選ぶ瞬間から楽しくあるべきですし、帰ったあとも作った作品を眺めて幸せになれる、そういう一連の体験だと思っています。Craftieはその一連の体験価値の最大化を意識してサービスを設計しています。
当時は、このジャンルに特化したワークショップ専用のサービスというものはなく、あったとしても様々なジャンルの体験予約ができる大きなサイトの一部に過ぎませんでした。同じ体験コマースでも、ジャンルを特化することによって、そのサービス自体の魅力が増えるだけでなく、ユーザー体験もより洗練されていくと思います。
ハンドメイドは、これからの時代、より強力なソーシャルツールとして活躍すると思いますし、その一連の体験を良いものにすることには大きな価値があると思います。これからももっとたくさんの幸せな時を作っていけたらなと思っています。
-----SENQに入居されて1年ですね!入居を決めた理由はなんでしょうか?
康: SENQ霞が関で開催されたイベントに登壇した際に初めてSENQを知ったのですが、落ち着いた内装や、レセプショニストがホスピタリティを持ってケアしてくれるところが、30代以降の大人起業向けだなと感じて入居を決めました。定期的に先生方の交流会なども開催するので、入居しているオフィスでイベントが開催出来るのも良いですね。
(毎シーズン、SENQで開催している先生交流会の様子)
(昨年のクリスマスにSENQで開催したキッズワークショップ&DJイベントの様子)
-----SENQに入居されて新しい出会いはありましたか?
康: 新たな出会いは、マネージャーの佐藤さんに、SENQパートナーのサザビーリーグ社を紹介いただきました。その際に、メンターの川隅さんから、同社の事業共創プロジェクト「LIVE LABORATORY 2018」のご案内をいただきました。
これまでCraftieは、蔦屋書店へのライフスタイルに合わせたワークショップ提供や、NEWoMan新宿店へのワークショップマルシェ提供など、企業協業を通じてナレッジを培ってきました。サザビーリーグ社との協業でもこれまで企業協業で培ったナレッジが活かせると感じましたし、同社の「半歩先のライフスタイル」を世の中に提案するという思想にも共感したので、「LIVE LABORATORY 2018」にエントリーをして、最終的に多数応募案件より、採択企業2社に選出いただきました。
今は、サザビーリーグ社の「Afternoon Tea LIVING」、「Flying Tiger Copenhagen」の2つのブランドと、秋からの協業に向けて企画開発を進めています。例えば、日本人がパーティーを開くとなったら、パーティーってどうやって準備するの?、グッズはどこで買うの?、何を手作りしたらいいの?など、戸惑ってしまうことが多いです。パーティーアイテムを取り扱っている「Flying Tiger Copenhagen」との協業では、それらを体感して貰うようなワークショップも企画しています。他にも、ライフスタイルを豊かにする新しい企画をお届けする予定ですので、今から楽しみです。
おわりに
最近では東京都が主催する女性起業家支援プログラムにみごと選抜され、シリコンバレーに研修に行っておられた康代表。起業家のみなさんそうなのですが、康さんもお話がわかりやすくて面白くて、書ききれないエピソードもたくさんの、エネルギー溢れる時間でした!ありがとうございました。
(インタビュー:三國 志乃)
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