INTERVIEW
2021.07.30

共同研究を重ね、時間をかけてお互いを知り合った上での資本提携だったからこそ、期待はあれど不安はなかった

人工光による植物工場事業を共に推し進めるハウス食品グループ本社株式会社と株式会社ファームシップ。「多様な業界から日本を動かす先駆者が集まり、オープンイノベーションを加速させる協業と共創の場」というSENQの特性を生かして関係を培いました。今回は、SENQのパートナーであるハウス食品グループ本社株式会社 新規事業開発部の藤井 弾さん(画像右)と同社のアグリビジネス推進部の福森 直仁さん(画像中央)、株式会社ファームシップ 代表取締役の北島 正裕さん(画像左)、そしてSENQオープンイノベーション担当マネージャー 川島 興介による座談会の様子をお伝えします。

川島:まずは皆さんのご経歴について教えてください。

藤井:2020年のインタビューでもお話しましたが、私はハウス食品グループ本社株式会社で、研究開発や商品企画、国際事業部門などを経て、現在は新規事業開発部に所属しています。そこで社内の新規事業と、パートナー企業さんで協業していくという事業の可能性を模索しているところです。またSENQのパートナーとして、入居企業さんへのアドバイスやメンタリングも担当しています。

福森:私は1992年にハウス食品へ入社、研究所に約10年、企画部門に約12年、その後立ち上げられた新設部署で新規事業の検討を約3年していました。その検討の中で、植物工場ビジネスの可能性を追求することになりました。2021年春からアグリ事業がグループ本社へ一括されることになり、現在はグループ本社のアグリビジネス推進部で、引き続き同事業に携わっております。

北島:私は、大学院卒業後に金融系企業に4年半ほど勤め、その後、日本でBtoC事業を展開している外資系企業へ移りました。しかし、生まれは農家の家系で、自分も農学部出身。次第に農業に携わりたいという気持ちが高まりました。そこで、植物工場を主事業とする企業で経験を積ませていただき、植物工場を軸にした農業ビジネスを考案して、2014年に株式会社ファームシップを創業しました。SENQ 京橋には2017年のオープン直後から入居しています。

 

川島:ハウス食品グループ様とファームシップ様は、2019年に第三者割当増資の実施および業務提携を合意されています。ここに至る経緯を教えてください。

藤井:そもそものきっかけは、私の前任が、SENQ主催のマッチングイベントでファームシップの北島さんと名刺交換させていただいたことでした。前任者から紹介を受けて私の方でもリサーチしてみたところ、ファームシップさんの公式ブログに当時私がハウス食品内で手掛けていたワサビに関する話題を見つけました。そこからファームシップさんに興味を持ち、一度北島さんとお話することになりました。

 

川島:北島さんはそのオファーを受けて、やはり「ぜひ!」と感じたのですか?

北島:いや、そういう意味では、弊社はあまりガツガツしていないので()。ですが、お互いの困りごとや、やりたいことが上手く重なれば、なにかできそうだという期待はありました。ハウスさんもいろいろな植物を育てているし、僕らも人工光で植物を育てている。我々が持っている技術、植物工場というツールを使って、上手くお互いの課題を解決できればいいな、そこで新しいビジネスを見出せるといいな……と、少しずつ発展していった感じです。

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川島:一方の課題(ニーズ)と他方の技術(シーズ)がうまくマッチングするかどうかのすり合わせは、協業には重要ですよね。

北島:もともと強いニーズや課題があって、両者の力を上手く合わせていけば解決できる、新しいビジネスに繋がるというのが見えてくると、そういった関係に繋がりますよね。

藤井:しかも、それは技術だけとは限らなかったりする。例えば、我々のワサビは主に海外で作っているのですが、日本国内の生産者とも繋がりたいと考えていました。長野県の生産者とはご縁があったけれど、それに並ぶ産地である静岡県の生産者とはまだ……という課題があったのです。そんな時、静岡県出身の北島さんに「静岡県でハウスにぴったりのプロジェクトがある」と聞いて、飛びついたんです。

北島:たまたま私が静岡県のアドバイザー的な役目をいただいている中で、農業の施策として、もっと生産性を高めたいという話がありまして。助成金制度を設けるので、課題解決に力を貸してほしいと。その話を藤井さんのところへ持ち込んだのが、本格的な協業のきっかけでしたね。

藤井:そうですね。それが最初にお会いしてから23ヶ月ぐらいだった。

北島:それでハウスさんを含めたいろいろな企業が入ってコンソーシアムを作り、「ワサビの施設園芸化」プロジェクトを3年ほどやらせていただきました。その中で、ハウスさんとファームシップの関係作りも少しずつ進んでいったという。

藤井:そこが結構大きかったですね。植物栽培に詳しい研究開発部門なども巻き込んでいく中でお互いの関係性が培われていった。

北島:共同で研究を行う中で、ハウスさんの研究開発の方とも「面白いね」という発見を共有できて。そこから「植物工場もやってみよう」ということになり、福森さんが登場するわけです。

福森:少々さかのぼりますが、弊社のアグリ事業は2005年からスタートしまして、当時は露地栽培に近いようなハウス栽培でハーブを作っていました。弊社はもともと加工食品が主事業でしたから、従来型の農業に苦戦していて、次の一手として植物工場でのハーブ生産の可能性を模索していたところでした。そこでファームシップさんをご紹介いただき、ファームシップさんでもレタス以外の植物工場を検討中というところでニーズがマッチして、2018年に共同研究をスタートさせました。

北島:ハウスさんは事業会社ですので、自社事業との相乗効果が見えないと、簡単に出資する話にはならないですよね。ワサビとハーブのプロジェクトを進めつつ、「もっと面白い話ができるかも」とお互いに話が盛り上がって、出資を決定していただいたという感じでしょうか。

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川島:技術だけでなく、社風や人柄も含めてお互いを知る機会や横展開できるニーズが見つかるなど、いくつもの要素がマッチングしてここに至ったわけですね。企業文化の違いなど、資本提携に至るまでのご苦労もあったかと思うのですが、その辺りはいかがでしたか。

福森:逆に資本提携してからだと感じますね。資本提携はあくまでステップで、そこで終わりじゃない。むしろそこから先に、合うか合わないかという状況が出てくる。

北島:資本提携前は「違う会社同士で友だちになった」感じだったのが、資本提携後は「違う会社同士で親戚になった」ような関係の近さが出てきますから。お互いの人となりや、会社としての性格も含めて考えることになります。その上で「なんとかやれるだろう」という雰囲気が出るか出ないかが大きい。ただ、ハウスさんとの関係についてはそういう不安はなかったですね。

 

川島:現在、提携されて約2年になるわけですが、今後期待するところなどは。

福森:この2年間でファームシップさんとフィージビリティスタディをしっかりやってきましたが、今後どう発展させていくのかが重要なポイントだと考えています。ビジネスとして利益をちゃんと生み出せるか。両者がWin-Winの関係でいるにはどうするか。そのステージに入ったと。

北島:福森さんともよく話しているのですが、「消費者により価値を感じていただける事業にしていかなければ」と考えていますね。例えば、野菜は同じ種類で100円のものも、200円のものもあるけれど、その価値の違いがどこにあるのか、消費者にはわかりにくいところがある。我々作る側としてはそのままではいけないと考えています。いかにわかりやすい価値を提示して「200円の価値がある野菜」として買っていただくか。そこを作りこんでいくべきだと。ハウスさんとは、こういった課題をより深掘りできる関係だと感じています。素材を作る農業ではなくて、その先の食と繋がる農業、価値を感じていただける農業。これを一緒に知恵を出し合って、形作っていきたいですね。

 

川島:技術だけでなく、両社が目指しているビジョンみたいなものもお互い共有していかないと、どこかですれ違う可能性がありますよね。

北島:はい。そこが一緒でないと、なかなか上手く続かないでしょうし。

福森:それは出資の話が出てから多くの時間を費やした部分ですね。完全にビジョンを一致させるのは難しいけれども、目指すアクションを取り続けないとすれ違ってしまう。それをできる会社と、できない会社がある中で、ファームシップさんとは上手くやっていけている。つまりファームシップさん自体もそういうスタンスで弊社に接してくれているということは大きいですね。

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川島:こうした良い関係を作っていくために、SENQがこれからもお手伝いできることはありますか。

藤井:SENQのマッチングのシステムをきっかけに、ファームシップさんと協業できたわけですので。ぜひまたマッチングやネットワーク作りの部分を盛り上げていただけると、我々もうれしいですね。今回の協業に携わって「パートナーと協業することによって、新しい価値が生まれる」のを実感しまして。一緒にやることで、お互いがメリットを享受し合える関係性を作れるとわかりました。SENQには、これをどういう仕組みで推し進められるかご検討いただけると、より盛り上がるのではないかと思います。

福森:マッチングも大事だけれども、マッチングからある程度関係性が成り立つまでのコミュニケーションは非常に大切だと思っています。そういう時にSENQという場を活用させてもらえたのはありがたかったですね。北島さんもお忙しいし、我々がフラッと行ける距離感でこの場があったのは大きかったと思います。それで共同研究という話にも発展したと思うし、事業としてこんな可能性がある、という話が積み重なっていきました。

川島:マッチングやネットワーク作りの場も、その後の関係性を深められる場も、SENQならではのメリットですので、これから皆様のような事例を増やせるようどんどん仕掛けていきますので、ぜひ一緒に盛り上げましょう!

 

(ライター:丸田カヨコ)

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