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ジョブシェアリングとはーー導入のメリットと取り組み事例

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ジョブシェアリングとはーー導入のメリットと取り組み事例

ジョブシェアリングとは

「ジョブシェアリング」とは、本来はフルタイム勤務の従業員1人が行う業務を2人以上で分担する雇用形態のことをいい、欧米を中心に導入されています。実施パターンとしては、1日の勤務時間をシェアする方法と、曜日によって勤務を交替する方法が一般的です。例えば、1日8時間の勤務時間を4時間ずつ担当したり、3.5時間ずつ勤務して交代時に1時間ほど共同作業したりする方法が挙げられます。

厚生労働省の委託調査資料では、ジョブシェアリングを、「フルタイム労働者1人分の職務を特定の2人で労働時間を分担しつつ行い、職務の成果について共同で責任を負うとともに評価・処遇についても2人セットで受ける制度」と説明しています。つまり、忙しいからと一時的にチーム内で作業を分担する行為は、ジョブシェアリングにはあたりません。ジョブシェアリングで業務を分担する従業員は評価や待遇が同じになるため、実施にはジョブシェアリングが可能な職種の選択や社内制度の整備などが必要となります。

ジョブシェアリングはワークシェアリングの一環

ジョブシェアリングと混同されやすい言葉に「ワークシェアリング」があります。厚生労働省は、ワークシェアリングを「雇用の維持・創出を図ることを目的として労働時間の短縮を行うものであり、雇用・賃金・労働時間の適切な配分を目指すもの」としています。もともとは1970~80年代の欧州の不況時に、1人あたりの労働時間を短縮してより多くの労働者で仕事を分かち合い、失業者を救済する目的で生まれた概念です。

ジョブシェアリングは、そうしたワークシェアリングの一形態ですが、厳密には実施する目的や意味は異なります。企業や社会全体で仕事を分け合うことで雇用を生み出すワークシェアリングとは異なり、ジョブシェアリングは、主に介護や育児などさまざまな要因でフルタイムでの勤務が難しい人材のニーズを満たすため、あるいはそうした人材を確保するためのものです。

ジョブシェアリングで業務を分担する従業員は、共同で作業を進め、共同で責任を負うことになります。そのため、同じレベルで業務を進められる人でチームを組むか、もしくは複数人で分担しても作業のクオリティに差が出にくく、進捗状況などの情報を共有しやすい職種や業務を選ぶといった工夫が求められます。

ジョブシェアリングの導入がもたらすメリット

ジョブシェアリングの導入により、どのようなメリットが期待できるのでしょうか。主なものは以下の通りです。

・人材の確保、定着
ジョブシェアリングというワークスタイルが選択肢に加わることで、これまで育児や介護のような家庭の事情や、病気などの理由でフルタイム勤務が難しかった従業員も仕事を続けやすくなり、離職防止や人材の確保につながります。また、フレキシブルな働き方が可能になることで、採用面でも有利に働くでしょう。

・労働力やスキルの有効活用
年齢や経験などが異なる従業員による職務の分担で、それぞれの専門知識やスキルが業務に反映されることも大きなメリットとなります。業務に関わる従業員が増えることでアイデアやイノベーションの創出が促され、業績アップも期待できるでしょう。また、1人あたりの仕事量が減って業務により集中できれば、生産性の向上にもつながります。

・ストレスの軽減
労働時間が短縮され、共同責任で作業を分担できるため、1人あたりの精神的負担が緩和されます。特に、介護など何らかの事情を抱えている従業員にとっては、プライベートの時間を有効に使える分、ストレスが軽減されるでしょう。とはいえ、役割分担や情報共有などがスムーズにいかない場合は、かえってストレスとなりかねません。定期的に評価や振り返りの機会を作り、改善すべきポイントがないかチェックする必要があるでしょう。

ジョブシェアリングとはーー導入のメリットと取り組み事例

ジョブシェアリングの海外事例

ジョブシェアリングは、日本ではまだあまり馴染みのない雇用形態です。ここでは、導入が進んでいる欧米での事例を紹介します。

アメリカのジョブシェアリング事例

先駆的な事例として知られているのが、20年以上前にアメリカの銀行で行われたジョブシェアリングです。Los Angelse Timesによると、きっかけとなったのは、チームマネジメントや顧客サービス、営業、財務管理などの分野で35年の経験を積み、当時のバンク・ボストンの支店長を務めていたCyndy Cunningham氏とShelley Murray氏による書面でした。キャリアと育児の両立を目指してジョブシェアリングを検討した2人は、自分たちの経歴や能力をまとめた書面を上層部に提出し、1つの役職に共同で就任することを求めました。

前例のない提案に対する反応はさまざまでしたが、数カ月も経たないうちに2人は外国為替担当副社長に昇進します。週50時間の仕事を分担して交替でオフィスに出勤し、火曜の朝はミーティングに出席して次の週の戦略を練りました。自分たちのことを“シームレスなチーム”とも表現しており、ジョブシェアリングを成功させた背景には、互いの決断を信頼し合う2人の関係性があったと考えられます。

イギリスのジョブシェアリング事例

次に紹介するのは、イギリス・ロンドンに本社を置く保険会社Aviva社の事例です。人材コンサルティング企業のTimewise社の記事によると、育児に積極的に関わり、妻のキャリアをサポートしたいという思いを持つWill McDonald氏とSam White氏の2人が上司に掛け合い、ジョブシェアリングを実現させたといいます。2017年にWhite氏が育児休暇を取得したときに、彼の役割をカバーしたのが同僚のMcDonald氏であり、その経験がジョブシェアリングを提案するきっかけにもなりました。

それまでの同社には、ディレクタークラスでジョブシェアリングをしている人の前例がなかったため、6カ月後に成果を証明すること、もし2人の仕事ぶりが十分な水準に達していないと上司やチームが感じた場合はその判断を受け入れることを条件に、トライアルをスタートしました。口頭だけではなく書面による引き継ぎの仕組みを作るなど、守るべきルールも自ら策定しています。同僚の反応は非常に好意的で、同じ取り組みを検討する人からアドバイスを求められることもあったようです。

さらに、McDonald氏が体調を崩して仕事を休むことになったときには、サポートを受けつつWhite氏が勤務日数を増やし、復帰のプロセスをフォローしました。記事では、女性の活躍推進や男女間の賃金格差の問題にも触れ、ジョブシェアリングはフルタイムでの勤務を希望しない人も高いレベルの仕事を続け、昇進することを可能にする手段と述べています。また、同社のジョブシェアリングには緊急時の対応や後継者の育成プランも組み込まれており、こうしたシームレスさは組織にとって“ボーナス”のようなものだとも語っています。

ジョブシェアリングがもたらす可能性

ジョブシェアリングは、従業員にとってはフレキシブルな働き方を実現し、企業にとっては多様な人材の確保を可能にする雇用形態です。時短勤務を行いつつ、責任ある職務でしっかりとキャリアを築きたいという人や、ダイバーシティ&インクルージョンを推進したい企業のニーズを満たす制度ともいえるでしょう。

日本では近い将来、労働人口が減少していくことが確実であり、優秀な人材の確保や従業員の離職防止はどの企業にとっても大きな経営課題となっています。今後、日本でも認知度が高まれば、ジョブシェアリングというフレキシブルな働き方の導入は、企業にとって欠かせない人材戦略の選択肢となるかもしれません。

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