個人投資家と考える社会的インパクト投資とは【 Change The Theory #3開催報告】

Change The Theory

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「デザインとテクノロジーの力で既成概念を打ち破る共創の場」ことSENQ六本木。ここで9月30日、個人投資の世界に新風を吹き込む日本クラウドキャピタルの経営陣が、「社会的インパクト投資」で個人投資の可能性を広げたネクストシフト株式会社の伊藤慎佐仁氏をゲストに迎え、エンジェル投資について語りました。


ーープログラム

【第一部】個人ができる社会的インパクト投資を実践されている、
                  伊藤慎佐仁氏に訊くエンジェル投資の可能性について              
                  パネリスト:
                  ネクストシフト株式会社     CEO 伊藤 慎佐仁  様
                  株式会社日本クラウドキャピタル CEO 柴原 祐喜   様

【第二部】未来へのバトン『フェアに挑戦できる未来を創る』
               日本クラウドキャピタルの新規事業戦略について

 

ーインパクト投資は「イグジットを求めない投資」ではない。
 リスク/リターン/社会貢献の3軸で投資するもの

第一部は、上場企業2社の代表取締役、5社の取締役を経験されながら、現在『個人ができる社会的インパクト投資』を実践するネクストシフト株式会社の代表を務め、故郷である鳥取県の地方創生にも注力しているという伊藤 慎佐仁様にお話を伺うことに。同じく登壇された日本クラウドキャピタル CEOの柴原 祐喜様と、語り合う場面もありました。

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写真左:柴原 祐喜 様 写真右:伊藤 慎佐仁 様

「金融業界で28年の経験を経て、マーケットの変化も見てきたので参考になる話ができれば」という伊藤さん。1998年から約2年のソフトバンク在籍時は財務部門で資金調達に関わり、CFOの北尾 義孝氏(当時、現SBIホールディングスCEO)の下で働いていたといいます。その後SBIホールディングスへ移り、2001年にはSBIホールディングスの子会社として、金融サービスの比較サイトを運営するファイナンス・オール株式会社を創業。ヘラクレス(ナスダックジャパン)に上場し、公募80億円からスタートして、ピーク時の時価総額は約1500億円にもなったといいます。

金融サービス比較におけるこだわりは「金融の専門家とそれ以外の人員を半分ずつ置く」こと。BtoCのサービスである比較サイト自体においては、専門知識がないカスタマーの視点を持つ人員を重視、BtoBのサービスとなる比較サイトへの掲載においては、クライアントとなる金融系企業のことを理解し、適切な情報提供ができる専門家を重視し、両立を目指したのだそうです。

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柴原さんは、アメリカでコーポレートファイナンスを学び、非上場株式の安定をテーマに研究を続ける中で日本のベンチャー出資環境に着目、帰国後は明治大学専門職大学院グローバルビジネス研究科 研究科長 木村 哲氏の下へ。ベンチャー出資の世界を改善したいという思いから日本クラウドキャピタルを創業し、課題解決に取り組まれています。

同社にはそのビジネスや世界観に共感するエンジェル投資家からの投資が多く、伊藤さんの掲げる「インパクト投資」にも通じるものを感じていると柴原様。

伊藤さんによると、インパクト投資とは経済的リターン(投資リターン)と社会的リターン(社会課題解決など)を両立する投資。投資先もマイクロファイナンス、再生可能エネルギー、ソーシャルベンチャーなどといった、社会貢献を重視した事業が主となっています。
バブル崩壊、リーマンショックといった金融危機を経て、本来人を助けたり、世の中の発展を促したりするはずだった金融は、そのネガティブな面が注目されやすくなりました。そこで、金融本来の役目に立ち返るインパクト投資を推し進め、金融をポジティブにしたいという思いが込められているのです。
ただ、ビジネスや世界観への共感は確かに重要だけれども「インパクト投資は社会貢献だけを重視するものではなく、イグジットも意識している」と伊藤さん。一般的な投資がリスク/リターンの2軸だとすると、インパクト投資はリスク/リターン/社会貢献の3軸で投資するものだと持論を展開しました。


ーー経済史に残るあの出来事のエピソードも……
       上場に成功する経営者の在り方とは

この日は、客席からの質問も盛んに発せられました。「上場に成功する企業の共通点」を訪ねられると、伊藤さんはまず「『運がいい』経営者」と答えます。ただし、それは偶然に頼るということではなく「運には普段事業を運営している姿勢や経営者の生き方が反映されることもある、人柄も大事だと思う」と、経営者としての在り方を示しました。
もう1つ「『絶対IPOするぞ』という執念があること」も挙げられます。優勝しようと思っていない人は優勝できないし、成功するアスリートは人からも応援されるもの。市場性やビジネスモデルも大事だけれども、「上場」とは外部の株主が入ることなので、応援される会社、経営者でないと株価は上がらないというアドバイスには、深い納得の声が漏れていました。

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一方、「ソフトバンク時代に孫さんと北尾さんが一番揉めていた案件は?」と、裏話を期待するかのような質問も飛びます。伊藤さんは「揉めごとではないけれど……」と苦笑しながら、日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)買収の際、オリックス株式会社CEOの宮内義彦氏と孫氏、北尾氏の話し合いに同席した時のエピソードを話してくださいました。
経済史に残る大きな出来事でもあり、その駆け引きの緊張感は忘れられないといいます。孫氏は自らのビジョンで人を惹きつけるタイプなのに対し、北尾氏は年上で交渉経験が豊富なこともあり、絶妙なタイミングで違うアプローチを仕掛け、決着をつけたのだとか……!

柴原さんには「IRの際に財務関連の情報以外で伝えていることは?」という質問が投げかけられました。ビジネスや世界観に共感してもらうための秘訣を探るかのような質問に、柴原さんは「『非上場株式市場をしっかりと作ります』ということを宣言して、そこに対する進捗状況を伝えています」と答えます。日本クラウドキャピタルの大きい目標として、金融史に残るような仕事をしていきたいこと。今後の日本経済を考えると、ベンチャー企業への出資は必要な手段だと考えていること。我々が作ろうとしている非上場株式市場は日本経済にとってプラスになるということ、だからこそ長く見守ってもらいながら市場を形成していきたいと熱く語りました。


ーー株主コミュニティが非上場株式会社を支援するシステムに

第二部では、非上場株式会社の課題解決策として、柴原さんから日本クラウドキャピタルが運営する株式投資型クラウドファンディングサービス「FUNDINNO」と、事業計画書作成サービス「FUNDOOR」が紹介されます。
家計から非上場株式会社への投資機会を定着させ、IPOやM&Aよりもタームや目標設定が小規模な「株主コミュニティ(非上場株売買)」を作るというビジョンに、客席からも熱い視線が送られていました。

インパクト投資や株式投資型クラウドファンディングなど、エンジェル投資を取り巻く新たな投資のあり方を学ぶ機会となったこのイベント。会場には個人投資家をはじめ多くの人が詰めかけ、その様子からも「金融」が本来のポジティブなイメージを取り戻しつつあると伝わってくるひとときになりました。


❖ 今回のご登壇企業 ❖
 ネクストシフト株式会社     : https://www.nextshift.jp/
 株式会社日本クラウドキャピタル https://www.cloud-capital.co.jp/

SENQ六本木では、これからも、「デザインとテクノロジーの力で既成概念を打ち破る共創の場」に相応しいイベントを定期的に開催してまいります。


(ライター:丸田カヨコ)

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