フリーランスにまつわる税金の基本【後編】覚えておきたい所得控除5つ
1年に一度の確定申告。面倒に感じる方も多いと思いますが、お金に関わる重大イベントの一つです。次年度の税金の増減、還付金の金額など、今後の運転資金に関わってくるのですから、「知らなくて損していた」ではあまりにももったいないもの。税金を熟知するのは難しくても、フリーランスならせめて税金の基本だけでも知っておく必要があります。
後編では、フリーランスがおさえておくべき所得控除と、経費の考え方を解説します。
これだけは覚えておきたい所得控除5つ
所得控除には、とても多くの種類があります。ここでは、多くのフリーランスの方に関係しそうな所得控除を紹介していきます。
医療費控除
1月1日から12月31日までの1年間に、「納税者本人」と「生計を一つにする配偶者や親族」のために支払った医療費の合計額が10万円(※その年の総所得金額等が200万円未満の場合は総所得金額等の5%)を超えた場合に受けられるのが「医療費控除」です。
医療費控除の額は次のように計算され、最高で200万円まで控除を受けられます。
「実際に支払った医療費の合計額」-「10万円※」-「保険金などで補てんされる金額」
※その年の総所得金額等が200万円未満の場合は総所得金額等の5%
この時の「保険金などで補てんされる金額」には、生命保険などから支払われた入院費給付金や、健康保険などから支払われる高額療養費・家族療養費・出産育児一時金などが該当します。医療費控除を受けようとする際には注意しましょう。
セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)
セルフメディケーション税制は、1月1日から12月31日までの1年間に、「納税者本人」と「生計を一つにする配偶者や親族」のために支払った「医療用から転用された医薬品・スイッチOTC医薬品」の購入額が、1万2千円を超えた場合に受けられる所得控除です。
例)対象医薬品の購入金額 2万円の場合
「購入金額 2万円」-「下限額 1万2000円」=「課税所得から控除される金額 8000円」
ただし、セルフメディケーション税制が「医療費控除の特例」であることから、通常の医療費控除と同時に控除を受けることはできません。
生命保険料控除
1月1日から12月31日までの1年間に支払った生命保険の保険料に応じて受けられるのが「生命保険料控除」です。
生命保険料は、一般の生命保険料、個人年金保険料、介護医療保険料の3つに区分され、それぞれで控除額を計算します。ただし、平成23年12月31日以前に契約した生命保険と、平成24年1月1日以後に契約した生命保険では、生命保険料控除の取扱いが異なります。また、保険期間が5年未満の生命保険などの中には、控除の対象とならないものもあるため注意が必要です。
小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済や確定拠出年金などの掛金を支払った場合に受けられる所得控除が「小規模企業共済等掛金控除」で、控除できる金額は1月1日から12月31日までの1年間に支払った掛金の「全額」です。
小規模企業共済等掛金控除の対象となる掛金は次の3つ。
1.小規模企業共済法の規定によって独立行政法人中小企業基盤整備機構と結んだ共済契約の掛金(旧第二種共済契約の掛金は生命保険料控除の対象となります)
2.確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金または個人型年金加入者掛金
3.地方公共団体が実施する、いわゆる心身障害者扶養共済制度の掛金
小規模企業共済や確定拠出年金などは将来に備えることができるほか、税負担が軽くなるというメリットもあります。収入に余裕がある時には掛金を増やすなど、上手に活用するといいでしょう。
寄附金控除
国や地方公共団体、公益団体などに寄附をした場合に受けられるのが「寄附金控除」で、被災地の地方公共団体への義援金や、一定の政党や政治資金団体への寄附金、一定の募金団体・認定NPO法人への寄附金なども対象になります。
寄附金控除は「所得控除」となり、控除額は次のように計算します。
「1年間に支出した特定寄附金の額の合計額(所得金額の40%が限度)」-「2000円」
※一定の政党や政治資金団体への寄附金や、一定の認定NPO法人・公益社団法人などへの寄附金については、寄附金控除と寄附金特別控除(税額控除)のどちらか有利な方を選ぶことができます。
なお、ふるさと納税も「寄附金控除」の一つですが、控除額の計算方法は他の寄附金とは異なるため注意しましょう。
どこまでが経費? 例で考える経費の考え方
事業活動に欠かせない支出が「経費」
確定申告の作業をしていると、だれもが一度は「どこまで経費として認められるのだろうか?」と悩んだことがあるのではないでしょうか。そんな時には、「その支出は事業に関連しているか?」と自問自答し、事業に関連しているのであれば経費として計上することができます。
ただし、その支出が事業に必要だった理由を税務署に明確に説明できなければなりません。
例えば、飲み会で支払った費用では、「どこで、だれと、どんな理由で飲食をしたのか」を領収書や帳簿に記録しておき、後から説明できるようにしておきましょう。お歳暮やお中元、冠婚葬祭に関する支出も同様で、「だれに、どのような目的で支出したのか」をはっきりさせておくことが大切です。
領収書がなくても支払った事実を証明できれば経費計上できる
フリーランスで活動していると、結婚式や葬式に呼ばれてお金を包んだ、バスや電車の料金を現金で支払った、カフェミーティングで割り勘にしたなど、領収書やレシートをもらいにくい場面が多々あります。そんな時でも、その支出が事業活動に欠かせない費用で、支払った事実を証明できれば、経費として計上できます。
その際には、文房具店などで販売されている「出金伝票」を利用して、支払った先の名前・金額・日時などを自分で記録しておけばOKです。また、冠婚葬祭などの場合には、招待状やお礼状なども一緒に保存しておくとベストです。
プライベートで使っていても案分すれば経費になる
フリーランスの場合、自宅の一部を事務所として使用したり、マイカーを仕事でも利用したりすることがあります。そのように事業費と生活費が混在している場合には、仕事とプライベートの利用頻度に合わせて「家事案分」すれば、支出を経費として計上できます。
■家事案分の例
家賃…仕事で利用している部屋の面積の割合をもとに、家賃の一部を経費計上できます。
電気代…パソコンや空調、照明などの電気代が該当し、業務として利用している時間などをもとに一部を経費計上できます。
通信費…スマホやネットの通信料などは、業務に使用している頻度に応じて経費計上できます。
自動車の関連費用…自動車の関連費用には車両購入費や車検代、修理費用、駐車場代、税金、ガソリン代などさまざまな支出がありますが、走行距離などに応じて一部を経費計上できます。
家事案分には明確なルールがないため、フリーランス本人で判断することになるのですが、やはり、「どのくらい事業として利用しているのか」「計算の根拠はどのようになっているのか」を、しっかりと説明できるようにしておく必要があります。
※詳しくは、関係機関や税理士等にご相談ください。
(ライター:ときよし 監修:斉藤 勇/ファイナンシャルプランナー)