チームビルディングはなぜ必要? メリットとおすすめのアクティビティ
チームビルディングとは
チームビルディングは、組織開発における手法の一つです。メンバーの能力や経験を最大限に活かし、目標を達成できるチームを構築するための取り組みを指します。チーム作りを目的としたワークショップや研修、業務上のコミュニケーションといったアプローチを含めてチームビルディングと呼ぶこともあります。
一人の力では成し遂げられないことでも、チームで個々の力を結集すれば、可能性は大きく広がります。一方で、多様な価値観が尊重される現代では、強いリーダーの指示に従ってパフォーマンスを発揮するというチームの形は機能しにくくなっています。また、変化が激しく、未来の予測が困難なVUCA時代においては、チームのスピーディーな意思決定が欠かせません。こうした背景から、チームビルディングはますます重視されるようになっています。
同じ部署内でプロジェクトごとにチームが組まれる場合もあれば、部署を横断する形でチームが組成されることもあります。特に後者のケースのチームビルディングでは、まずはお互いを知るところから始まります。相互理解を深め、チームの目標やビジョンを共有し、各自が自発的に考え動けるようになれば、チームのパフォーマンスはさらに向上していきます。
ただし、どんなに個人の能力が高くても、チームを組成してすぐに高いパフォーマンスを発揮できるわけではありません。では、どのようなステップを踏むとよいのでしょうか。チームビルディングのプロセスについて詳しくみていきましょう。
チームビルディングの5つのプロセス
チームビルディングを理解し、有効に機能させるためのプロセスを考える上で欠かせないのが、心理学者のブルース. W. タックマンが提唱した「タックマンモデル」です。このモデルでは、チームビルディングのプロセスを次の5つの段階に分けています。
1. 形成期(Forming)
チームを結成してすぐの段階です。ほかのメンバーのことがよくわかっておらず、共通の目標はまだ明確になっていません。メンバー間には緊張や遠慮が見られるため、互いを知るきっかけとなるアプローチが必要です。
2. 混乱期(Storming)
互いの考え方や価値観、スキルがある程度わかってくる段階です。一方で、考え方の違いから対立したり、不満や混乱を招きやすくなったりします。異なる意見を受け入れ、議論を重ねて相互理解を深める姿勢が求められます。
3. 統一期(Norming)
互いを理解し合い、関係が安定してチームワークが生まれてくる段階です。一定のルールやメンバーの役割がチーム内で共有され、目標に向かって力を合わせることができます。
4. 機能期(Performing)
リーダーの指示がなくてもメンバーが主体的に動き、互いをフォローし合える段階です。チームに一体感が見られ、個人のパフォーマンスも最大化します。メンバーの自律をさらに促せるように権限委譲を進める一方で、高い団結力を保つ取り組みが求められます。
5. 散会期(Adjourning)
目標を達成し、チームとしての活動を終了する段階です。メンバーの異動や時間の制約で終結するケースもあります。解散を残念に思う声や、互いを称賛する声がメンバーからあがったら、チームビルディングは成功したといえるでしょう。
チームビルディングのメリット
では、チームビルディングにはどのようなメリットがあるのでしょうか。主に、以下の4つのポイントが挙げられます。
1. コミュニケーションが活性化する
チームの目標という共通認識を持つことで、メンバー間で会話する機会が増え、チーム内のコミュニケーションが促進されます。その結果、報告・連絡・相談やナレッジの共有が進み、さまざまな課題をスムーズに解決できるようになります。
2. モチベーションが向上する
チームビルディングを通じて、チームの目標と個人の役割が明確になります。自分のパフォーマンスがチーム目標の達成を左右するため、業務に対する責任感とモチベーションが向上します。具体的な仕事の成果につながると、さらに意欲が高まると同時に、周囲を刺激してチーム全体のモチベーションアップも期待できます。
3. 新しいアイデアやイノベーションが生まれる
メンバーとのコラボレーションにより、一人では思いつかなかった新たなアイデアが生まれやすくなります。また、多様なメンバーと交流することで、創造力や提案力が磨かれます。そうした動きが、組織のイノベーションを生み出すきっかけともなります。
4. 生産性が向上する
一人ひとりの能力を引き出すチームビルディングを通じて、個人の成長を促すことができます。それにより、チーム全体のパフォーマンスも上がり、組織としての生産性向上にもつながります。
チームビルディングにおすすめのアクティビティ
チームビルディングはどのように進めるとよいのでしょうか。ここでは、さまざまなアプローチのなかでも特に取り組みやすい、アクティビティのアイデアを紹介します。
1. 私は誰でしょうクイズ
楽しみながら自己紹介ができるアクティビティです。メンバーにカードを配り、名前以外のプロフィールや趣味、特徴、日常の出来事などを記入してもらいます。回収後、リーダーもしくはファシリテーターがその内容を読み上げ、誰のカードかを当てるというものです。ルールは単純ですが、メンバーの意外な一面を知ることができて場が盛り上がり、よいアイスブレイクにもなります。形成期のアクティビティとしておすすめです。
2. 共通点探しゲーム
こちらも、自己紹介に関連するアクティビティです。3~5名程度のチームを作り、自己紹介や質問をしながら全員の共通点を探して、チームごとにその結果を発表します。相互理解が深まると同時に、共通点が見つかったときの達成感や一体感を味わうことができます。形成期や混乱期におすすめです。
3. ペーパータワー
3~5名程度のチームに分かれ、20~30枚のA4 用紙を積み上げていくゲームです。用紙は折り曲げたり切ったりすることができ、開始前に用紙を1枚使って5分間の作戦会議を行います。その後、5分間で一番高いタワーを作れたチームが優勝です。アイデアを出し合って作戦を立て、協力して作業を進める必要があり、統一期や機能期に向いています。
多様性が重視される時代のチームビルディング
働く人の価値観や働き方が多様化するなか、コミュニケーション不足を感じる、情報伝達や連携がスムーズにいかないなど、さまざまな課題が顕在化しています。個人のスキルや経験を重視しつつ、チームや組織のパフォーマンスを向上させるチームビルディングの手法は、そうした課題を解決する糸口ともなるでしょう。
チームビルディングを行う際、まずはチームの目標を設定しますが、メンバーの共感を得られない目標であった場合はモチベーションの低下を招きかねません。強制的な目標とならないように、リーダーの一存で決めず、事前にヒアリングを行うなどして目標設定のプロセスにチームのメンバーが関わることが大切です。そして、どの段階においても丁寧にコミュニケーションや議論を重ね、理解を深める必要があります。
異なる考えを持つメンバーがいるからこそ、達成できる目標や得られる成果もあるでしょう。多様性が尊重される時代において、チームビルディングに関する取り組みは、組織の新たな可能性を引き出すアプローチとして今後さらに重視されるのではないでしょうか。