INTERVIEW
2020.04.24

働き方・休み方は、もっと多様であっていい!本当の意味での休み方とは?

「休日に人を動かす」をミッションとし、休み方にフォーカスしたビジネスを展開する休日デザイン研究所。代表の鈴木 潤士(すずき じゅんじ)さんに、「コロナウイルスの影響で働き方と休み方に大きな変革が起きている今だからこそ必要な観点」として、インタビューを行いました。ここでは、鈴木さんのご経歴や休日デザイン研究所の活動、そしてこれからSENQで展開したいことについて伺いました。


-----ご経歴と、休日デザイン研究所立ち上げのきっかけを教えてください。

DSC_0021休日デザイン研究所 代表 鈴木 潤士(すずき じゅんじ)さん

鈴木:私はもともとJTB のハウスエージェンシーであるJTB コミュニケーションデザインに長らく勤務していまして、在籍当時、JTB全グループの社員を対象とした新規事業公募制度でプレゼン時にその場で社長から承認を得ました。テーマは「休日の行動データを元にしたマーケティング事業」でした。消費者の経済需要(旅行需要)が休日に集中することに注目したものです。

JTBで事業化する話もあったのですが、まずは自分でデジタルマーケティングの知識をつけた上で事業化したいと考えたので、ネットイヤーグループ株式会社へ転職した上で、独立しました。実は「休日に高まる需要をどう活かすか」というビジネスに特化した競合他社は今でもほとんどないのです。

-----「休日に特化したビジネス」について、御社の事業を例に教えていただけますか。

鈴木:現在引き合いが多い事業は、「働き方改革・休み方改革を踏まえた企業研修」と「休日に特化したマーケティング事業」です。他にも、「オウンドメディアの企画・運用」や「休日分散化推進事務局の運営」などを行っています。

企業研修では、働き方改革だけでなく、あえて休み方に着目する方法をお伝えしています。

働き方改革に着手する企業が増え、残業削減や時短勤務に取り組んでいるものの、急進させすぎて生産性の改善が追いついていないケースも多い。「早めに退社はしたものの、結局社外のカフェで仕事をしている」といった本末転倒な話もよく聞きます。働き方改革によって、皆がプライベートもしっかり充実させてハッピーになったかというと、意外とそうでもないのが現状ではないでしょうか。

それはおそらく「働き方」だけを見て取り組んでいるからで、実際は「休み方」の部分に核心があるかもしれない。例えば、新社会人は入社してまもなくゴールデンウィーク(GW)を迎えますよね。その時「どう休んだか」は、その後の仕事に影響することが当研究所のリサーチ結果でも出ています。

1-9出典:休日デザイン研究所「新入社員の自立意識と学生時代の充実感と休み方 ~休み方改革編 その2〜

 2出典:休日デザイン研究所「新入社員の自立意識と学生時代の充実感と休み方 ~休み方改革編 その2〜」 

ご覧の通り、新社会人は「学生時代にどれだけ有意義な時間を過ごしていたか」、そして、そこに紐づいた「入社してすぐ(GW)の休み方」によって、仕事に対するモチベーションや、自立して何かに取り組もうという意識がかなり違うのです。

そこで、例えばGWに同僚や地元の友人と会う機会を作って「私は今こんなことをやっている、あなたは何をやっているの?」といった話をすることで、休み明け、仕事に戻った時に良い方へマインドが変わっているケースがある。一方、自宅でぐうたら過ごし、マインドチェンジもできず、仕事についても休み前に引きずっていた考えがそのままずっと継続されるケースもある。このケースはリサーチ上でも生産性の部分でかなりネガティブな結果が出ていますね。

新社会人や若手だけではなく、例えば定年を10年後に控えたような世代も、休み方が働き方に影響するというリサーチ結果が出ています。具体的には「あと10年、自分はどのように仕事をしていくのか」という意識の部分と、余暇の過ごし方に関係性が見られるのです。

こうしたことから、働き方だけではなく「休み方」にフォーカスする必要がある、もう一歩踏み込んだ言い方をすると「働き方改革における生産性の余地は『休み方』にあるのではないか」というのが当研究所の考えです。日常的な仕事への向き合い方から生産性に繋がるハイパフォーマンスの出し方に至るまで、休み方のデザインが大切だと考えます。

企業研修では、弊社調査データに基づき休み方と労働生産性の関係を見ることで、本来捉えるべき課題の本質を明確化し、企業としてどんなことができるのかについて、企業人事部の課題解決に繋がる気づき、学びを得てもらっています。

-----「休日に特化したマーケティング」の事業では、どのようなことをされているのでしょうか。

“消費者の休日マインド”と”消費者との接点を持つサービス提供者”の間にあるギャップ(※サービス享受者と提供者のギャップ)を整理し、自治体や企業の抱える課題に対するマーケティング施策(オンライン・オフライン施策)を行っています。

自治体向けであれば、休日を過ごす人々が「何に気づいて、その中で何に興味を持って行動するのか」といったことをひとつずつ整理して、その感情や思考、行動の道筋を可視化した「カスタマージャーニーマップ」を作っていき、それに沿ってプロモーションなどを考えます。

企業向けであれば、休日に小売店へ集客するには、そこで商品を買ってもらうには……となります。

例えば、今は山梨県身延町の「休日に地方へ集客する」ためのブランディングをお手伝いしています。この町は山や湖の「キャンプ場」などのアウトドアレジャーの名所で、漫画・アニメ・ドラマにもなった「ゆるキャン△」の舞台にもなっている。他にもこの町の気候でしか生産できない希少な「あけぼの大豆」という特産品があります。それらの付加価値を高めて生産者に還元する方法を考え、ブランドサイト(【公式】あけぼの大豆ブランドサイト)を作ったり、マーケティングをしたり、ECサイトをお手伝いしたりしているのです。

「あけぼの大豆」でいえば、特徴的な「粒の大きさ」を見せられるWebサイトを作り、デザイン性が高い贈答用の箱を用意し、生産者の思いを語ってもらったインタビュー記事も読んでもらって、最終的にECサイトで買ってもらう……といった道筋作りですね。

消費者との接点をビジネス機会としたい自治体や企業にとって祝日を含む休日が経済循環を生み、その提供価値を享受する消費者は休日の過ごし方による気持ちの変化が充実に繋がり、休み明けの仕事への推進力になるものです。

-----オウンドメディアと休日分散化の事業についても教えてください。

オウンドメディア「休日デザイン研究所」ではいくつかコンテンツのカテゴリーがあるのですが、注目度が高いのは「休日デザインの人」ですね。デザイナーや職人など、クリエイティブな仕事をする人の創造力と休日の関係性について取材しています。

例えば、刃物の町である新潟県燕三条市に、美容院などに卸すハサミを作っている職人さんがいて、休日はホームセンターへ行って、売っているハサミの調査をしているそうなんです。ものづくりの人は休日もアンテナを張り巡らせていて、自分の仕事に間接的にも関わる観点を磨いている人が多い傾向にあると思います。

もちろん完全オフの人も中にはいますけど、頭の片隅に仕事のことがあって、何かのきっかけでそこが繋がる。そこにインスピレーションを持っていて、休みに関わる創造性から何かを作っていく人が結構いたりしますね。

それから、「休日分散化事業」では事務局を務めています。これは以前、民主党政権下で立ち上げられた「ゴールデンウィークの連休を5ブロックに分ける」事業が発端で、その後星野リゾートさんが中心となって、経済同友会の観光立国推進委員に参画していた企業5社でスタートしたものです。調査分析を行ったり、参画企業から募って「休み方・働き方の研修」をさせていただいたりしています。現在、賛同参画企業は30社余りですが、今後は参画企業を増やしいろいろな企業にとっての休み方の拠り所となれればと思っています。

 -----新型コロナウイルスの流行による外出自粛を受けて、休み方もこれまで予想できなかった形で大きく変容しようとしていますが、どのように見ていらっしゃいますか。

DSC_0018

鈴木:これまでの社会では「働く=オン・休む=オフ」が、テレビでいうと「主電源を入れたり切ったりする」感じに近かった。でも、今はそのオン・オフが「リモコンのスイッチで画面を消す」レベルになって、働いている時も休んでいる時も、常にある程度動ける状態をキープしているように感じています。働く・休むが完全に交互にはなってない状況ですね。

一方、(新型コロナウイルスの流行による外出自粛が求められている)今の状況で、休日に関して大きな影響が出ているもののひとつがイベントや旅行ですよね。「イベントに参加しよう」「旅行に行こう」「大型商業施設へ買い物に行こう」となれば、イベントの内容を調べたり、旅程を計画するためにあれこれ調べたり、買い物リストを作ったりすることでモチベーションが上がってくるものですが、今はそのモチベーション自体が作り出せない状況に陥っています。

もちろん物理的にイベントや旅行に行く目処が立たないこともありますが、やはりモチベーションは、オンとオフがしっかり明確になっている中でこそ生み出せるものじゃないかと考えています。では、イベントや旅行、買い物へのモチベーションが高まらないといい休みが過ごせないかというと、そうとは限らない。

むしろこれまでが「イベントや旅行、買い物などの一方向へモチベーションを高めていく休み方しかしてこなかった」のではないでしょうか。自由に動けるだけに休みの選択肢は広いように見えますが、実は「出かけて何かする」という狭いところだけで気持ちを満たそうとしていた。だからこそ、いざ「出かけずに休んでください」となると「何をすればいいか分からない」という状況が増えているわけです。

今は、これまでの休み方以外に選択肢を広げ、オン・オフが入り乱れていることも含めて、時間の使い方や価値観を見直す機会だと思います。出かけられなければ「自分の生活圏内で何かする」という選択肢に目が向いて、「実はご近所でこんなことができるんだ」、「身近にこんなものがあったんだ」といった気づきに繋がってくるはずです。ぜひ、「自分がどうしたいのか」「何をしたら満たされるのか」ということを考える機会を作ってみましょう。

-----休日に「出かけて何かする」と「家で何もせずに過ごす」は二択ではなくて、その間にも無数の選択肢があるということですね。

鈴木:そうですね。当研究所では、例えば「昼まで寝てなんとなくテレビを見て、掃除・洗濯をしてスーパーへ買い物に行って休日が終わる」といった過ごし方を「こなしの休日」と呼んでいて「今日もこなしちゃった」みたいな言い方をするのですが、そのルーティンが合っている人もいますよね。ただ、その中にちょっとした「What’s New!」的な気づきがあると、その分「意外と良い休日だった」って思えるんじゃないでしょうか。

「買い物先で新しい家電製品を知って帰宅後に検索でいろいろ調べてみた」というちょっとした気づきや、「商店街で気になっていたコーヒー屋さんに初めて行ってみた」でも、その日の「What’s New!」になったりする。それをどう得るのかっていうのは休日の中ですごく重要だと思います。

もちろん、その意識はサービス提供側にも重要だと思います。プロモーションも、もはやメディアでこぞって「こうしましょう」「あれが良い」と提案をして、そこに多くの人を誘導するだけではない。今こういう状況にあるからこそ、もっと休日における人のマインドに目を向けて、広がる選択肢に対してどういうようなアプローチが必要なのか考える必要があるのではないかと。

-----休日デザイン研究所としては、そこに今後どのように関わっていくのですか。

鈴木:「休み方」についてオンラインやリアルでサロンを開く予定です。例えば、「休みは家で読書をするのが最も快適」という人もいれば「休みに外に出られないと鬱憤が溜まる」という人もいますよね。そこで「自分はこういう休み方をする傾向がある、こういう休み方が好きだ」ということを一緒に分析し、相談に応じ、伴走してくれる休日の達人的なメンターをつけます。

そうして「What’s New!」に気づくきっかけをつかんだり、休み方の選択肢を広げたりする機会を作る。そこから「自分にとってよりよい休み方」を複数見つけてもらって、仕事との関係性をより充実したものにしてもらう。

休日の達人とディスカッションしているうちに「農作業の経験が必要だ」と気づくかもしれない。それなら、身延町であけぼの大豆の畑を年間で借りて耕してという流れを作るとか。休み方だけでなく、今どういう働き方をしているかも聞いて、休み方と働き方のバランス改善や方向性を見ていくことや、逆のタイプの休み方をする人たちと引き合わせて「全然違うんだ」というところから気づきを得るとか。そういったことを今後の事業としてやっていきたいと思っています。

 -----視野が広がりますね。テーマは「よりよい休み方を見つけて実践する」ことですが、仕事に活かしたり、事業アイディアにも繋がったりする多くの気づきが生まれそうです。

鈴木:そうですね。日本の国民性なのか、休みに限らず「こうでないといけない」という意識が強いので、さまざまな価値観がもっと認められるようでありたいですよね。働き方・休み方改革もその価値観の多様性とか、休み方の多様性というのを充実させることが大前提になると思うので、そこをまず個人はもちろん、企業にも考えてほしい。社会としていろいろな価値観の多様性を理解してもらえるとうれしいです。

 DSC_0053

------ SENQ霞が関でも休み方についてのイベントが開催できるのを楽しみにしております。本日はありがとうございました。

 (インタビュー:丸田カヨコ)

関連団体
休日デザイン研究所: https://ukyu.biz/

 

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